今年のチームを語る上で欠かすことができない選手がいる。それはボランチ・斎藤亮輔だ。３年生の斎藤は、ついこの間までBチームにいる選手だった。無尽蔵のスタミナを誇る彼だったが、なかなかその持ち味を発揮できずにいた。
 
　しかし、３年になって最後の１年という意識と、インターハイ予選までスタンドで応援するなかで、「自分がこのチームに入ったら、もっと中盤で動いて危険なスペースや守備のセカンドボールを拾えるのではないかと考えるようになった」と、このチームのなかで台頭していく術を見つけ出していった。
 
　普段の紅白戦から運動量を生かした献身的かつ意欲的なプレーを見せ続けた結果、高橋監督の目に留まり、選手権予選でAチームに昇格。すると豊富な運動量で星や川上が弾いたボールを拾っては、攻撃陣に繋げたり、コースを限定したり、相手のキーマンを鋭いプレスで潰したことで、攻守のバランスが非常に良くなっていった。
 
「今ではもう無くてはならない存在。斎藤が動き続けることで、攻守ともに円滑に進む。坪川とのコンビネーションも良くて、斎藤のおかげで坪川の攻撃力がより生きるようになった」（高橋監督）
 
　強固な壁を築く守備陣と、強烈なアタッカー陣。そしてそれをつなぐ献身的なボランチの存在。組織としてさらに強さが増した矢板中央が目指すのは、ズバリ2009年度のベスト４以上の成績だ。
 
「選手権に向けて、もっと堅守速攻の精度を上げていきたいし、セットプレーをもっと高めていきたい。高いポテンシャルを持った選手がいるだけに、全員で上を狙っていきたい」（高橋監督）
 
　手応えを形にできるか。栃木の盟主・矢板中央が最高の陣容を持って、勝負の年の選手権に臨む。
 
取材・文：安藤隆人（サッカージャーナリスト）