• トップ
  • ニュース一覧
  • 【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十一「南米王者が見せた“不細工な”強さ」

【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十一「南米王者が見せた“不細工な”強さ」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年12月28日

戦いを貫徹した男たちは頭を垂れず、敗れざる者の顔を浮かべていた。

0-3で敗れたバルセロナとの決勝でも“リーベルらしさ”は散見。試合開始から容赦なく相手の足を削り、報復を誘いながら戦い切った。写真:サッカーダイジェスト写真部

画像を見る

 リーベルだけでなく、アルゼンチンのクラブに顕著な特徴と言えるが、彼らは戦いのツボを知っている。相手がどんな心理状態で、自分たちがなにをすべきか、なにをしてはいけないのか。その呼吸が彼らは絶妙で、比類がない。それはボール扱いが上手い、下手という次元を完全に超えている。ずる賢さやマリーシアとも少し違い、どこか打算的で戦闘に長けているのだ。
 
 戦い慣れしていない選手は、窮屈な状況に堪えきれない。我慢できず、勢いに任せて攻めかかってしまう。自陣にこもっていることが卑怯に映る、それに堪えられない。しかし、戦いの巧者は自分がどう見られるかよりも、最後に勝てるか、にすべてを懸けられる。だから、少々相手に攻められる状況であっても、少しも焦らず、じっくりと構え、相手の急所を突ける。
 
 勝つためには、どんなに“不細工”でも一向に構わないのだ。
 
 クラブワールドカップ決勝、リーベルは明らかに格上のFCバルセロナに対し、彼ら独自の戦いを見せている。試合開始から容赦なくバルサの選手の足を削り、小突き回している。挑発し、苛立たせ、あわよくば報復を誘った。欧州のジャッジ基準なら、ほとんどがファウルになるようなシーンが続いた。見ようによっては、見苦しかった。しかし悪逆の限りを尽くしたとしても、勝利こそが彼らにとっての絶対的正義なのである。
 
 結局、リーベルは力の差を見せつけられる形で0-3と蹴散らされた。引き立て役に過ぎなかった。しかし、戦いを貫徹した男たちは頭を垂れず、敗れざる者の顔を浮かべていた。その表情にこそ、アルゼンチン流の戦い方の極意があった。
 
 彼らは決して屈しない。
 
 あの日の経験も、戦闘者としての厚みに加えるのだろう。   
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
 
【関連記事】
【リーガ・エスパニョーラ】前半戦のベスト11を発表! ネイマールやモドリッチ、ゴディンなどを選出!
【バルセロナ冬の補強動向】世界王者にこれ以上の新戦力は必要なし! というより……
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十「育成型という嘘」
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十九「ガムシャラの代償」
【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十八「昇格争いの緊張感」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト いざアジア王者へ!
    5月10日発売
    悲願のACL初制覇へ
    横浜F・マリノス
    充実企画で
    強さの秘密を徹底解剖
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ