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ノーゴールの悔しさと、チームを救った充実感。得点王狙うI神戸のエース田中美南の決断「勝てばいい。得点は自分のエゴ」【WEリーグ】

カテゴリ:女子サッカー

西森彰

2023年06月05日

ワンチャンスをゴールに結びつける

古巣の千葉Lから決勝弾の成宮。写真:西森彰

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 そしてサポーターへの謝意も述べた。「今日は本当に多くの方が来てくださったので、それも私たち選手を後押ししてくれたと思います」。開幕戦以来の2,000人超え(2,051名)も、チームの力になっていた。

「長いボールを蹴らされて、少し千葉選手頼みになってしまった」と前半を振り返った三上監督だったが、チャンスは少なからずあった。

 27分に千葉玲海菜の突破からのシュート。39分にも蓮輪真琴がフリーでシュートを放ち、プレーしている選手も「ゴール前まで行けているし、そこで点が取れれば違った展開になったかな、と」(岸川)自信を得ていた。

 しかし、ここで試合巧者のI神戸が、ワンチャンスをゴールに結びつけた。43分、3バックのセンターに入っていた土光真代が右サイドの守屋都弥を走らせる。今季のI神戸のストロングポイントになっている守屋のクロスに合わせたのは、千葉Lにも在籍していた成宮唯。抑えたシュートを、ゴールに流し込んだ。

 リードしてからも、不利な時間帯が長かったI神戸は、いくつかの決定的なピンチを、守護神・山下杏也加のセーブで凌ぐ。すると劣勢を悟った田中美南が、前線から中盤へ下りてきた。
 
 I神戸としては優勝を逃した以上、次の目標は「勝ってリーグ2位を死守」とともに「チームから得点王を出す=田中美に点を取らせる」ことだったはず。その田中美が、低めの位置でプレーするようになった。

「あのままなら、たぶん、失点をどこかで食らっていた。チームとしてもなかなか点を取れそうなシーンがなかった。しっかりと(成宮)唯が点を決めてくれて、(戦い方が)はっきりした」(田中美)。攻勢に出る千葉Lの選手と激しく球際で戦い、ピンチの芽を摘み取り、ビルドアップ時の受け手ともなった。

 いつもなら4-4-2と3-5-2の争いで生まれるミスマッチを、どこかで活かすI神戸だが、ミラーゲームでそれが作れず、苦戦の要因となっていた。朴監督も「ポジションを守っていたら、崩せない」と、選手に自主的なポジションチェンジを求めたそうだが、そこで得点王争いをしているエースが後ろに下がる選択をするとまでは思っていたかどうか。

「0-0だったら、自分も前に重心をかけて、1点取るか、食らうかの、もっと厳しい戦いになっていたかと思う。チームが勝てばいいんです。得点は自分のエゴで、2位(を守る)というのがチームにとって大きいので」と田中美。ゴールを決められなかった悔しさを顔に滲ませてはいたが、同時に、チームを救った充実感も漂わせた。
 
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