G大阪ユースでパワハラ行為はなぜ起きたのか? 育成の雄の自浄能力が今、問われている

カテゴリ:Jリーグ

下薗昌記

2023年04月01日

急務は指揮官を失ったユースの早急な立て直し

 ただ、プロとして大成する以外に後がない20代前後の若手選手と、トップ昇格だけでなく大学への進学なども現実的な選択肢に保つユースの選手では、サッカーに対する取り組みに温度差が生じるのも無理はない。

「プロとして活躍するために厳しさを求めたということは本人も説明しています」と和田取締役は森下氏の言葉を代弁したが、その熱さが全ての選手には受け入れられなかったのかもしれない。

 ただ、パワハラと認定された以上、森下氏の責任はやはり大きいと言わざるを得ない。

 ユースの監督を3月30日で退任した森下氏はまだG大阪に籍を残し、今後その処遇が決まるが、クラブにとっての急務は指揮官を失ったユースの早急な立て直しである。

 昨季は不可解な選手起用を繰り返した末に、プレミアリーグWESTからプリンスリーグへの降格が決定。1年での昇格を目ざすG大阪ユースだがセレッソ大阪ユースや京都サンガユース、興国高など難敵との戦いが待っている。

 森下氏の後任についてはG大阪のアカデミー内からの起用が濃厚だ。
 
 かつてカテゴリーこそ異なるものの、パワハラ問題を起こしたサガン鳥栖や湘南ベルマーレは記者会見に社長が出席。顧問弁護士2人が出席する会見に、小野忠史社長の姿がない理由を問うと、和田取締役は「アカデミー案件ということですので、私と松波で対応します」との答えを返してきたが、クラブの生命線でもあるアカデミーを揺るがしかねない事態は、単なるアカデミー案件ではないはずだ。

「ガンバイズム」の定義は人それぞれだろうが、多くのサポーターが持つイメージは、アカデミー育ちの選手が躍動してこそのG大阪だろう。過去の素晴らしい指導者が「ガンバのDNA」を脈々と受け継ぎ、数々のタレントを育て上げてきたクラブのアカデミーには、筆者も思い入れを持つ。スカウトの最前線で、他クラブとの熾烈な競争をしながら原石を見出す作業に取り組むスタッフの姿も見続けている。

 かつて関西圏の逸材がこぞってG大阪のアカデミーを選択した当時と異なり、C大阪やヴィッセル神戸、さらには優れた高体連のチームもそれぞれのカラーを発揮。松波アカデミーダイレクターが、森下氏をユースの監督に配置したのも、単なる「OB人事」でなく、心からアカデミーの強化を求めていたことは、間違いないが、残った結果はユースの降格とパワハラ問題による監督交代、である。

 森下氏の「退任」だけで終わらせるべき問題ではないはずだ。育成の雄の自浄能力が今、問われている。

取材・文●下薗昌記(サッカーライター)
 
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