G大阪ユースでパワハラ行為はなぜ起きたのか? 育成の雄の自浄能力が今、問われている

カテゴリ:Jリーグ

下薗昌記

2023年04月01日

いくつかの予兆があったはずだが…

会見に出席した和田取締役(右)と松波アカデミーダイレクター(左)。写真:下薗昌記

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「育成のガンバ」

 Jリーグにおける選手育成の草分け的存在でもあり、数々の日本代表を輩出してきたガンバ大阪だが、2021年からG大阪ユースを率いてきた森下仁志氏が、指導の適正範囲を超えた不適切な言動が認められた、として退任が決定した。

 3月31日、クラブの顧問弁護士2人が同席するなか、強化アカデミー担当の和田昌裕取締役と、松波正信アカデミーダイレクターが記者会見を行ない、今回の経緯などを説明した。

 3月30日、クラブが発表した経緯はこうだ。

 今年の2月28日、一部のアカデミー選手から「指導の適正範囲を超えた不適切な言動が見受けられる」と情報提供があったことを受けて、クラブは調査を開始。森下氏は自宅待機を命じられるなか、選手とスタッフの計39人から聞き取り調査を実施し、3月9日には森下氏からもヒアリングを行なった。

 顧問弁護士とも協議をした結果、3月24日に不適切な言動が認定され、森下氏との話し合いの末、退任が決定したという。

「指導上、必要な場合を超えていますので、そういう意味ではパワーハラスメントに該当すると考えております」と和田取締役は、いわゆるパワハラ行為にあたると明言。

 松波アカデミーダイレクターも「2021年からということになります。回数は分からないが複数回」と聞き取り調査の末に、いき過ぎた指導が常態化していたことを認めたが、事態を把握したのはあくまでも今年2月の情報提供がきっかけだったと強弁した。

「モニタリングで認識不足というところでは反省しております」と、何度か「モニタリングで認識不足」と繰り返した松波アカデミーダイレクターではあるが、この言葉には疑問符がつく。
 
 選手のみならず、アカデミースタッフに対してもパワハラ行為があったことをクラブは認めているわけだ。

 また、過度な指導の末に怪我人が多発していたのも事実だが「怪我人が多く出るというところで、トレーニングのコントロールという部分はコーチ陣も感じていた部分だと思います」と和田取締役は話した。

 いくつかの予兆があったはずだが、選手サイドからの告発で動き出したのは後手だったと言わざるを得ない。

 そして、当の森下氏は「とにかくご迷惑をおかけしたことを謝罪したい」と話しているという。

 G大阪U-23で若いプロ選手を鼓舞し、厳しい指導の末に開花させた当時の手腕は、本物だった。

 ユース最終学年で指導を受けた中村仁郎は、思うように出番がなかったプロ1年目の昨季終盤、居残り練習で黙々と得意のフェイントを繰り返したが、中村が口にしたのは「仁志さんに『自分がやってきたことを変えるな』って言われてきたので」だった。

 そして3月26日のルヴァンカップの大阪ダービーで途中出場。同点ゴールを叩き込んだ食野亮太郎も、先発から外れた悔しさをバネに「自分に矢印を向けてやってきた」と胸を張ったが、「自分に矢印を向けろ」という言葉は、森下チルドレンが叩き込まれた哲学である。

 福田湧矢や塚元大ら多くの選手たちが「仁志さん」と今でも慕うのは、紛れもない事実である。

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