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レフェリーも育てる時代へ。「場数や経験数も大事」サッカーの母国イングランドとの違いは?【審判員インタビュー|第4回・佐藤隆治】

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2023年02月23日

忘れられない準決勝の割り当て。「親善試合と、アジア最終予選やアジアカップは選手の目の色も違う」

自身の記憶に残る一戦と語っていた2015年アジア杯のオーストラリア対オマーン。国際大会で貴重な経験を積んだ。(C)Getty Images

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――試合全体のレフェリングより、国を背負った選手たちやサポーターの雰囲気が生み出す特殊な試合に、どうやって入っていくのか? という難しさでしょうか。

「そうですね。試合を覚えていないということは、大きなミスはしていないと思います。ミスしたら絶対覚えていますから。ということは、試合がどうこうというよりも、国歌が流れた時の緊張感とかですよね。私が高校生の時にテレビで見た『ドーハの悲劇』や大学生の時の『ジョホールバルの歓喜』。そういった国際試合にこれから関わっていくのだと感じた。親善試合ではあったのですが、すごくインパクトが残っています。

 あと、2015年のアジアカップは鮮明に覚えています。この時の私はワールドカップのアジア最終予選の割り当てを受けたことがなかった。親善試合と、アジア最終予選やアジアカップは選手の目の色も違う。それを経験したことのないレフェリーが、アジアカップに参加するとなれば、当然緊張するじゃないですか。しかも、最初の割り当てが開催国のオーストラリアの試合でしたから、よりそうですよね。この大会では、日本代表が準々決勝で敗退したこともあり、準決勝もレフェリーとして割り当てを受けました」

――自国のチームが勝ち進むと、ワールドカップであれ、アジアカップであれ、アジア・チャンピオンズリーグであれ、レフェリーは割り当てを受け辛くなりますから、巡り合わせもありますよね。

「そうですね。アジア・チャンピオンズリーグも、アル・アイン(UAE)対全北現代モータース(韓国)の決勝・第2戦のレフェリーを2016年に担当したのをよく覚えています」

――2015年のアジアカップに参加されて、アジアのトップレフェリーと触れ合って衝撃を受けましたか?

「絶頂期のラフシャン・イルマトフは衝撃でした。こんなレフェリーがいるんだと。選手上がりということもあって、スピードが凄い。そもそもの体格も大きいですし、一歩の足のリーチも全然違います。当時は、インストラクターたちも『ラフシャンの動きを見習いなさい』と言っていましたし、ポジショニングは意識させられました。

 ただ、当時の日本では、ラフシャンのような動きは求められていません。日本人は正確性を求めるので、ジャッジにすごく敏感だと思います。それは、選手もそうですし、ベンチもそうですし、サポーターもそうですし、メディアの方もそうではないでしょうか。でも、海外では、判定の〇×も大事なのですが、よりポジショニングを求められます」
 
――海外では、正しい判定を導くためのポジショニングというより、説得力あるポジショニングが求められる。たとえばペナルティーエリア(PA)内の事象で、PA外から見たほうがジャッジしやすくとも、PA内に強引にポジションを取るような。

「そうですね。日本では、選手たちのプレーエリアに入らないように適度な距離感で判定をしていました。多少違ったポジションからでも、判定が間違っていなければ、選手も、審判インストラクターも何も言いません。日本では、正しい判定をすることが求められます。

 ですが海外では、ポジショニングが遠くて正しい判定をしても、『ラック(運)で合っていた』と言われてしまう。『いや、この争点ならば、この距離感で、この角度のほうが』と言っても、それは通用しません。

 分かりやすい例がコーナーキックです。コーナーキックは様々な所で、選手たちが駆け引きを行なっています。その監視をするためには、ペナルティエリア外からのほうが見やすいし、日本のレフェリーのポジショニングの多くはそうです。

 でもAFCの大会だと、『そのポジショニングではよく見えないぞ』となってしまう。これは、どちらが良いとかの話ではなくて、AFC仕様にしないといけないと思いました。今までのポジションよりも、例え5メートル近付いたとしても判定は変わらないかもしれません。でも、AFCが望むポジションは5メートル近付くこと。なので、それを意識しました。

 ラフシャンを見ていれば分かりますよね。凄いスプリントで、ペナルティエリア内にも入ってポジションを取る。そこで多少選手と接触してしまっても、とにかくテレビ画面に映るようなポジションを取る。ただ、AFCもFIFAも、ビデオアシスタントレフェリー(VAR)が導入されるようになってから、ポジショニングに変化があったと感じています」

――日本は質を意識されますけど、AFCやFIFAの大会では量を求められたわけですね。海外は、無駄走りで魅せることも要求された。

「そうですね。求められた走りをすると、いつか怪我をする可能性があると感じました。それでアジアカップを終えた2015年の2月から、身体を作り直しました。国際審判員としてのターニングポイントですね」
 
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