【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十五「日本の総力」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2015年11月20日

ハリルホジッチ監督が日本サッカーを強化できる割合など高がしれている。

日本が世界との差を詰めるには、日本人選手が渡欧してその戦場での経験を身につけるしか手はないだろう。カンボジア戦で試合を決めた本田の活躍が、それを物語っている。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 世界との距離は広がりつつある。
 言うまでもないが、欧州には欧州の事情があり、日本がアジアから抜け出すことはできない。「ロシアの隣とも言えるんだから、欧州予選を!」という非現実的な案を持ち出す気もない。アジアの弱小国との試合を重ねながら、どうにか意識を高く保ち、強くなる方策を探すしかないだろう。

 しかし、重圧のかかる戦場を経験するかどうか、で選手は成長するし、チームは成熟するものである。

 そう考えると、より多くの日本人選手が渡欧してその戦場での経験を身につけるしか手はないだろう。もちろんJリーグを軽視すべきではないし、持っている力が劣っているわけでもない。ただ、異国でプレーすることによって、高い緊張度や激しい競い合いやあざとさに対して順応適応し、自分のプレーが出せるようになってタフになる、というのも事実である。

 適応力。この点で、欧州組には戦い慣れているというアドバンテージがあり、彼らが代表を牽引するのは必然なのだろう。本田圭佑はミランで不遇を託い、決して好調でないにもかかわらず、代表における存在感は際立っている。カンボジア戦で試合を決めたのも、交代出場した本田だった。

 率直に言って、ハリルホジッチ監督が日本サッカーを強化できる割合など高がしれている。外国人監督である彼は日本人サッカー選手の情報量が圧倒的に少なく、特長や気質を把握できていない。彼はこれからも見誤るだろうが、そのデメリットは外国人監督なら織り込み済みとも言える。彼に託された使命は、勝負師としての経験によって日本代表を勝利に導いて気運を高め、それをサッカー界に還元すること。もしそれができないなら―――。

 もっとも、ハリルホジッチを批判、否定するだけでは代表に変革は起きない。ブラジル・ワールドカップの惨敗から抜け出すには、実際に戦う選手が変革を起こすしかないだろう。ロシア・ワールドカップまで、戦える選手がどれだけ増えるか―――。それが日本の総力となるはずだ。

文:小宮良之

こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
 
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