とはいえ、フィジカルに秀でたアフリカ系選手が数多くひしめくチームで出番を得るのは簡単ではないだろう。外国人監督というのは戦術も要求もまちまちで、一筋縄ではいかない部分もある。

　そういった難しさは昨季の清水で経験済みだ。平岡宏章前監督が率いていた昨季序盤はエース級と位置づけられたが、６月にゼ・リカルド監督が就任すると一気に出番を失う形になったからだ。市立船橋高から清水入りした2000年から比較的コンスタントに起用されてきた鈴木にとって、この時期はプロ入り後、最大の壁だったかもしれない。

「昨季途中からの難しさ？　僕は大丈夫でしたよ。自分にフォーカスすることだけを考えていたので。一歩目を早くする走りとか走力アップとかフィジカル面にも取り組んだし、成長することだけに集中して、自分に矢印を向けて頑張ってました。

　乾（貴士）君からも『海外へ行けばいろんな監督がいる』と言われたけど、そこに適応していけるかが大事。外国人監督のもとで試合に出られない経験をできたこともプラスに捉えています。サッカー選手をやっていれば、どこにいても出られる保証はないし、海外に行けばなおさら。それをしっかりと認識して、ここでやっていきたいです」

　新天地で着実にキャリアを積み重ねることができれば、１年後のパリ五輪、そして３年後の2026年北中米ワールドカップ（W杯）への道も見えてくるはずだ。
 

　本人も今回の移籍時に「昨年のワールドカップを現地で観戦した際、僕よりも若い選手が活躍する姿を見て、自分の目ざすべきところがより明確になりました」と清水を通じてコメントを発表。大舞台に立つためにさらなる飛躍が必要だと痛感したのは間違いない。

「プロになってから初めてのワールドカップでしたけど、誰もが行きたいと夢見る場所なんだって改めて思いましたし、自分もそういう気持ちが強まった。今は早く試合に出て、チームを助けられる選手になりたいです」と意気込みを口にする。

　ストラスブールでの背番号18は、U-21日本代表で活躍した時につけていたゲンの良い番号。彼自身にこだわりはなかったようだが、「良いイメージもあるし、悪くない番号」と前向きに捉えている。

　新たなユニホームを身にまとい、フランスのピッチに立つ日は果たしていつ訪れるのか。パリ世代のエース候補が欧州５大リーグで躍動する姿が今から待ち遠しい。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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