そして、スクリーンに2021年６月のEUROで優勝した時の、二人が涙を流して抱き合う様子が映し出される。マンチーニは説明する。

「あのハグはすべてが集約されていた。サッカーだけでなく我々の人生も。あの勝利がルーカに少しでも喜びを与えてくれていたらと思う。彼はあのチームにとってはなくてはならない存在だった」

　アッズーリでは、マンチーニが技術を指導するなら、ヴィアッリは選手たちの精神面のケアを担当していた。

　ヴィアッリは2017年からすい臓がんがであることがわかっていた。だが一時期はほぼ克服したと報道されていた。

「ルーカは病気の話はほとんどしなかった。すでに他の人間から聞いてそのことは知っていたが、彼の口から初めて聞いたのは2019年だった。でもその時も治療中だから大丈夫、問題ないと前向きだった。彼は病気相手でも勇敢な戦士だった。それはミハイロビッチと同じだ」

　昨年12月16日に白血病で亡くなったシニシャ・ミハイロビッチともマンチーニは深い絆があった。サンプドリア、ラツィオで共にプレーし、インテル監督時代にはミハイロビッチが彼のアシスタントを務めた。マンチーニは短い間に２人の盟友を失ったことになる。

　最後にマンチーニはこう締めくくっている。

「ルーカは『2026年のワールドカップで我々は勝たなくてはいけない、自分も必ず力を貸す』と約束してくれた。彼は本当にアッズーリのそばにいてくれると思う。ルーカのためにも我々は勝利しなければならない」

文●利根川晶子