【現地レポート】パリ同時多発テロ事件――EURO2016開催に向けて募る不安

カテゴリ:ワールド

増田有

2015年11月14日

EURO2016では開催スタジアムの安全が懸念される。

すでに128人の尊い命が失われ、300人以上が負傷した今回の同時多発テロ。テロの標的になる可能性があるEURO2016に向けて、フランス政府はどんな対策を講じるのか。(C)REUTERS/AFLO

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 今回の事件は、2つの点でフランス社会に大きな衝撃を与えた。ひとつは、大統領が観戦に訪れる試合を標的にするなど、周到に計画されたと見られるテロを未然に防げなかったということ。
 
 もうひとつは、コンサートホールやレストランなど、大勢の人が集まる場所で不特定多数を狙った犯行だったということだ。
 
 例えば、スタッド・ドゥ・フランスは、EURO2016のメイン会場となるスタジアムである。大会期間中は、ヨーロッパ中から大勢の観客が来場し、各国の首脳も訪れる。再びこのようなテロの標的になる可能性は高い。
 
 もちろん、フランス各地の他のスタジアムがテロのターゲットになることも考慮する必要がある。
 
 今年1月のシャルリー・エブド襲撃事件以来、パリ市内では厳重な警備体制が敷かれていたにもかかわらず、今回のような事件が勃発したという事実は、EURO2016開催を7か月後に控えたフランスの治安に、小さくない不安を抱かせることとなった。
 
 選手やファンに与える心理的影響も小さくはない。レ・ブルーの主力であるFWアントワーヌ・グリエーズマンは自身のツイッターで、人質事件の舞台となり100人以上が犠牲となったコンサートホールに姉が居合わせたことを報告。沈痛な心境を吐露した。
 
「神様のおかげで姉は逃げ出せた。すべての犠牲者とその家族のために祈っている」
 
 また、安全確認に時間がかかり、スタッド・ドゥ・フランス内で一夜を過ごす羽目になったドイツ代表のDFマッツ・フンメルスも、ショックを隠せない様子だ。
 
「ドイツに戻ってきたけど、昨日起きたことが信じられない。この世界はどうなってしまったんだ。僕の思いは愛する人を亡くしたすべての人とともにある」
 
 死者は11月14日現在で128人を数え、依然として100人近くが重体、負傷者は300人を超えている。この悲劇の余波により、EURO2016はもちろん、国内リーグから客足が遠のくことも懸念されている。
 
 EURO2016開催国として選手や観客の安全を守る責務を負うフランスは、難題を突きつけられた。
 
文:増田有

ドイツ代表が宿泊したホテルには、試合当日の昼間に爆発物が仕掛けられているとの通報があった。レーブ監督(写真)は試合後、「チーム全員が今回の一件に震撼している。昼間に恐ろしいことがあったから、爆発音を聞いてすぐに悪い予感がした」と語った。

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