守備の重要性を痛感させた二度の敗戦が選手に危機感をもたらす。

9月からは河﨑監督が現場に復帰。チームにも引き締まった空気が生まれる。写真:安藤隆人

年代別代表などの経験も豊富なキャプテンの阿部。連覇に向けてチームを牽引する存在だ。写真:安藤隆人
だが、逆にこれで彼らに残された大会は、選手権のみとなった。すでに9月から本格復帰していた河﨑監督が選手権予選に向けて最初に着手したのは、守備の立て直しだった。
「キーマンとなる選手は居る。まずは大黒柱となる選手を固定して、そこからバランスを整えていく」
こう語ったように、大黒柱には大橋を指名。パスセンスがあり、バランス感覚に秀でた大橋を明確なチームの軸に置いた。守備能力が高い川渕とのボランチコンビを組ませ、ふたりの役割もより明確にした。
GKは怪我から復帰した昨年度の優勝メンバーの坂口璃久だけでなく、成長著しい高橋を引き続き起用。彼の高いコーチングセンスから、岡田と東方智紀のCBコンビとの連係を強化し、ラインコントロール、ボールの奪いどころをはっきりさせるなど、ベースをもう一度作り直した。
一方、攻撃面では、「このチームの武器はサイド攻撃」と、サイドには右に阿部、左に片山と、個で打開できる選手を配置。そしてFWには決定力のある窪田と、ドリブルで打開もできる村中龍仁を配置。
徐々に明確な『今年の形』が示されていく一方、選手たちも大きな危機感から自立し始めようとしていた。
「履正社、新潟明訓戦の負けは、本当に悔しかった。でもこの2チームは守備がしっかりしていて、11人全員が守備意識が高く、チームの土台になっていた。新潟明訓戦は監督からも『相手を褒めるしかない』と言われて、自分たちもそれができるようにならないと勝てないと痛感した。まずは守備をしっかりして、全員で攻撃をする。やるべきことを当たり前のようにしないといけないと、全員が思うようになった」
こう語ったのは、主軸のひとりである大橋だ。名将の示した方向性と、選手たちの意識が一体となり、チームは大きく成長した。それを実証するように、選手権予選では危なげない戦いぶりを披露した。
鵬学園との決勝戦。インターハイ予選の時との違いを見せつけた。相手のキーマンを機能させないように、鵬学園のエース弥村信幸には川渕をマンマークに、相手の両サイドバックに対してのプレスの行き方、CBのマークの受け渡しなどを明確にしたことで、相手のストロングポイントを消した。
さらに自らのストロングポイントであるサイド攻撃を駆使し、鵬学園の守備を打ち砕く。とりわけ片山の突破力は抜群のアクセントととなり、窪田、村中の2トップも1ゴールずつを挙げて3−0の勝利に結びつけた。
盤石の試合運び。それはチームに足りなかった『土台』ができた表われだった。名将の復活だけでなく、それまでのスタッフと選手との試行錯誤が選手たちに自立を促した。
「このままじゃ全国で1勝もできないのは間違いない。今のままじゃ、監督の理想には近づかない。監督の理想は『全員守備、全員攻撃』。この2か月でその理想に近づけたい」
勝利の喜びに浮かれることなく、大橋はこう言い切った。選手権までの2か月、やり残していることはまだまだある。彼らの目はすでに全国へと向けられていた。チーム一丸となって2連覇が懸かった選手権に挑む覚悟はでき上がっている。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
「キーマンとなる選手は居る。まずは大黒柱となる選手を固定して、そこからバランスを整えていく」
こう語ったように、大黒柱には大橋を指名。パスセンスがあり、バランス感覚に秀でた大橋を明確なチームの軸に置いた。守備能力が高い川渕とのボランチコンビを組ませ、ふたりの役割もより明確にした。
GKは怪我から復帰した昨年度の優勝メンバーの坂口璃久だけでなく、成長著しい高橋を引き続き起用。彼の高いコーチングセンスから、岡田と東方智紀のCBコンビとの連係を強化し、ラインコントロール、ボールの奪いどころをはっきりさせるなど、ベースをもう一度作り直した。
一方、攻撃面では、「このチームの武器はサイド攻撃」と、サイドには右に阿部、左に片山と、個で打開できる選手を配置。そしてFWには決定力のある窪田と、ドリブルで打開もできる村中龍仁を配置。
徐々に明確な『今年の形』が示されていく一方、選手たちも大きな危機感から自立し始めようとしていた。
「履正社、新潟明訓戦の負けは、本当に悔しかった。でもこの2チームは守備がしっかりしていて、11人全員が守備意識が高く、チームの土台になっていた。新潟明訓戦は監督からも『相手を褒めるしかない』と言われて、自分たちもそれができるようにならないと勝てないと痛感した。まずは守備をしっかりして、全員で攻撃をする。やるべきことを当たり前のようにしないといけないと、全員が思うようになった」
こう語ったのは、主軸のひとりである大橋だ。名将の示した方向性と、選手たちの意識が一体となり、チームは大きく成長した。それを実証するように、選手権予選では危なげない戦いぶりを披露した。
鵬学園との決勝戦。インターハイ予選の時との違いを見せつけた。相手のキーマンを機能させないように、鵬学園のエース弥村信幸には川渕をマンマークに、相手の両サイドバックに対してのプレスの行き方、CBのマークの受け渡しなどを明確にしたことで、相手のストロングポイントを消した。
さらに自らのストロングポイントであるサイド攻撃を駆使し、鵬学園の守備を打ち砕く。とりわけ片山の突破力は抜群のアクセントととなり、窪田、村中の2トップも1ゴールずつを挙げて3−0の勝利に結びつけた。
盤石の試合運び。それはチームに足りなかった『土台』ができた表われだった。名将の復活だけでなく、それまでのスタッフと選手との試行錯誤が選手たちに自立を促した。
「このままじゃ全国で1勝もできないのは間違いない。今のままじゃ、監督の理想には近づかない。監督の理想は『全員守備、全員攻撃』。この2か月でその理想に近づけたい」
勝利の喜びに浮かれることなく、大橋はこう言い切った。選手権までの2か月、やり残していることはまだまだある。彼らの目はすでに全国へと向けられていた。チーム一丸となって2連覇が懸かった選手権に挑む覚悟はでき上がっている。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)