【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十二「原始的マンマーク」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年10月28日

日本人は集団戦術に優れ、そこを頼りにしている面もあるが…。

フットボールの本質でもある1対1を突き詰め、バルセロナ相手に大勝したセルタ。その守備の気概は、日本も見習うべき部分が少なくない。(C)Getty Images

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 現在はゾーンディフェンスが全盛である。スペースを網目のように見立て、そこに人とボールを誘い込む。ブロックを作って守りながら、ラインをコントロールしてスペースを狭め、敵の自由を削り取る。
 
 さらに言えば、自分たちがボールを持っているより相手に持たせ、網目に引きずり込み、奪い返して入れ替わるカウンターが有効な時代になっている。勝利への強迫観念に駆られた指導者にとって、効率性こそが崇敬の対象である。
 
 従って、マンマークは効率的ではなく、非合理で時代遅れとされた。リスクマネジメントの視点で考えた場合、「1対1で敗れた場合、失点の危機に陥る」からだ。お互いが補完できるゾーンディフェンスが一般化していったのは必然と言える。
 
 しかしはたして、それは進化と言えるのか?
 
<1対1で勝つか負けるか>
 
 それがフットボールの本来的な醍醐味であるとすれば――。それを掘り下げることに、正義があるのかもしれない。そしてそれは同時に、日本サッカーに突きつけられた課題とも言えるだろう。
 
 日本人は集団戦術に優れ、そこを頼りにしている面もあるが、守備側は時にどうしても苦しい局面を強いられる瞬間がある。「数的有利を保つ」という考え方は間違っていないが、「数的同数、もしくは劣勢でも守り抜く」気概がなければ、90分間は守り切れないだろう。日本人DFが海外のトップリーグでほとんど成功できていない理由は、その覚悟の差にあるかもしれない。
 
 そもそもアルゼンチン・フットボールは、1対1の覚悟を伝統としている。絶対に目の前の相手に負けない。そのためには手段も選ばず、闘争心と戦いの経験の掛け合わせが技量のベースとなる。セルタのベリッソ監督が、マンマーク&ショートカウンターを現代風にマイナーチェンジできたのは必然と言えるかもしれない。
 
 日本人がそれを模倣できるかは別にして、観察・検証することでひとつのヒントにはすべきだろう。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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