「大久保選手が手を顔にぶつけてきて、自分も思わず足を伸ばしてしまった」(アデミウソン)
試合後、審判団がピッチから去ろうとした際、スタンドからは耳をつんざくブーイングが降りかかり、「おかしいだろ!」「もう審判辞めろ!」と痛烈な野次も飛んだ。
川崎の風間八宏監督もピッチの脇で待ち構え、主審に説明を求める。話し合いはすぐに終わったものの、指揮官の表情は納得していないと言わんばかり。会場の喧噪は、その後もしばらく続いた。
渦中の大久保は取材陣が待つミックスゾーンに現れるや、「あり得ないでしょ! あれでイエロー(カード)を出されたら、なにもできないよ」とだけ言い残し、足早に会場を去った。
当事者のひとりであるアデミウソンは、あの場面をこう振り返る。
「倒れる前に大久保選手が手を顔にぶつけてきて、自分も思わず足を伸ばしてしまった。彼の真意がどうだったかは分かりませんが、手が顔に当たった時にこっちを向いたので、一瞬わざとかと思ってしまい、こっちも足を出してしまった。ふたりが同時にやってはいけないことをやってしまったし、審判としては、両方にイエローを出すという判断をしたと思う。ただ、大久保選手は残念ながら二枚目(の警告)で退場になってしまった」
競り合いのなかで大久保の手が顔に当たり、その行為を故意と感じて思わず倒してしまった。それがアデミウソン側の見解だ。大久保は詳細を語っておらず、まだ片方の言い分でしかない。
口を開かなった大久保の胸中を代弁するかのように、中村が“疑惑の警告”に関して語り出す。それは、「ひとりの笛で選手の人生が変わる」という切実な訴えでもあった。