アディショナルタイムに突入した90+3分過ぎに“事件”は起きた。
その瞬間、大久保嘉人は両膝からピッチに崩れ落ち、両手で頭を抱えた。
第2ステージ15節の横浜戦。1点を追いかける川崎は終始攻め続けるも、時計の針はすでに90分を回っていた。アディショナルタイムは4分。刻々と時間が経過するなか、90+3分過ぎに“事件”は起きた。
左サイドで川崎の大久保がボールをキープし、横浜のアデミウソンがボールを奪いにかかる。一度は大久保が身体を入れてプレスをいなすも、その直後にアデミウソンが猛然と追いかけ、身体ごと潰すような形で大久保を倒した。
当然、主審の榎本一慶氏はファウルの判定。倒された大久保は怒りを露わにし、アデミウソンも大きなジェスチャーで抗議する。数秒間のひと悶着が起きたものの、選手たちは次のプレーに向けてすぐさま動き出す。榎本主審はアデミウソンにイエローカードを提示(公式記録上は90+4分)。問題は次の場面だ。
両軍の選手がポジションを取るなか、主審は静かに大久保の元へ歩み寄りイエローカードを提示(公式記録上は90+5分)。11分に一度目の警告を受けていたエースは、この日二度目の警告で退場処分を受けたのだ。直後、等々力競技場がどよめき、川崎のメンバーが主審に詰め寄る。
大久保はピッチに座り込み、“なにもしていない”と両手を使ってアピール。中村憲剛や小林悠らが駆け寄って猛抗議するが、主審は首を横に振るばかり。結局判定は覆らず、大久保は怒りを堪えたまま小走りで控室へ。そして、わずか数十秒後に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
3年連続リーグ得点王とJ1通算最多得点の両方に肉薄するなか、大久保は次節のアウェー浦和戦に出場停止。ここに来ての欠場は、まさに痛恨。大久保に残されたゲームは、最終節のホーム仙台戦のみとなった。

[左上]横浜戦で放ったシュートは2本。太ももを負傷している影響もあり精度を欠いた。[右上]11分に齋藤を倒して警告を受け、結果的にこれが尾を引いた。[左下]問題の場面以外でもアデミウソン(右)と何度かマッチアップ。[右下]前線にパスが入らない状況のなか、中盤に下がってゲームメイクする場面も見られた。写真:サッカーダイジェスト