クロップの意見を吸い上げながらリクルート・ポリシーを変えるべきだ。
さて、そのクロップはどれだけの手腕を発揮するのか。もちろん現時点では答えようがない。しかし個人的には、チャンピオンズ・リーグ出場権を獲得できる4位に食い込むチャンスは十分にあると思っている(リバプールは8節終了現在で勝点12の10位)。
チェルシーは開幕から絶不調なうえ、マンチェスター勢も波に乗り切れていないし、アーセナルも例年通り安定感がない。今シーズンのプレミアリーグが混戦になるのは確実だ。私はロジャース続投でも4位は現実目標と思っていたが、クロップ就任でチームにはエキストラのモチベーションが与えられた。この大きな刺激でチームが活性化するのは間違いなく、チャンピオンズ・リーグ出場権獲得は現実的な目標と言えるだろう。
とはいえ、チーム強化というものには、中長期的を見据えた明確なビジョンが不可欠。もっとも改善すべきは、リクルート・ポリシーだ。10年4月にFSG(フェンウェイ・スポーツ・グループ)がオーナーになって以降のリバプールは、ポテンシャルの高い若手を買い、価値を高めて売却するという「育てて売る」を補強戦略の軸に据えてきた。
しかし、ここまでの成功例は実質スアレスだけ。アンディ・キャロル(ウェストハム)をはじめファビオ・ボリーニ(現サンダーランド)、マリオ・バロテッリ(現ミラン)は獲得時より低い金額で手放さざるをえず、このままではジョー・アレン、デヤン・ロブレン、アダム・ララーナ、ロベルト・フィルミーノなども同じ道を辿るだろう。
幸にもカネがないわけではない。だからこそ、今後は同じ大金を使うのであれば、若いタレントばかりではなく、実績のあるトップクラスも獲得し、チームの基盤を固めるべき。もちろん、クロップの意見をできるだけ吸い上げながらだ。それでなければ、いくら監督の首を挿げ替え続けたところで、リバプールの本当の意味での復権はありえない。
そもそもリバプールは、監督を頻繁に代えるようなクラブではなかった。しかし、FSG政権になってからの5年間で指揮官交代は今回で4度目。中長期的なビジョンに欠けている何よりの証拠だ。
その中長期的なビジョンの中で、クロップも評価すべきだろう。過去に率いたマインツとドルトムントでは過度なプレッシャーもなく、ともに結局は7年間を過ごした。せっかちなファンやメディアはすぐに結果を求めるかもしれないが、監督には最低でも3年は与えるべきだ。実際、クロップがドルトムントでブンデスリーガ優勝を勝ち取ったのは、就任3年目のシーズンだった。
試合の結果だけに一喜一憂すれば、監督は自分の目指すサッカーを実現するのが困難になる。クロップに時間を与えれば相応の結果が付いてくることは、ドルトムントで実証済みだ。それだけに、クロップ政権が長期間に渡って存続することを、私は切に願っている。
文:ジェームズ・ピアース(リバプール・エコー紙)
取材・翻訳:松澤浩三
【著者プロフィール】
James PEARCE / Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース(リバプール・エコー紙)
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。
チェルシーは開幕から絶不調なうえ、マンチェスター勢も波に乗り切れていないし、アーセナルも例年通り安定感がない。今シーズンのプレミアリーグが混戦になるのは確実だ。私はロジャース続投でも4位は現実目標と思っていたが、クロップ就任でチームにはエキストラのモチベーションが与えられた。この大きな刺激でチームが活性化するのは間違いなく、チャンピオンズ・リーグ出場権獲得は現実的な目標と言えるだろう。
とはいえ、チーム強化というものには、中長期的を見据えた明確なビジョンが不可欠。もっとも改善すべきは、リクルート・ポリシーだ。10年4月にFSG(フェンウェイ・スポーツ・グループ)がオーナーになって以降のリバプールは、ポテンシャルの高い若手を買い、価値を高めて売却するという「育てて売る」を補強戦略の軸に据えてきた。
しかし、ここまでの成功例は実質スアレスだけ。アンディ・キャロル(ウェストハム)をはじめファビオ・ボリーニ(現サンダーランド)、マリオ・バロテッリ(現ミラン)は獲得時より低い金額で手放さざるをえず、このままではジョー・アレン、デヤン・ロブレン、アダム・ララーナ、ロベルト・フィルミーノなども同じ道を辿るだろう。
幸にもカネがないわけではない。だからこそ、今後は同じ大金を使うのであれば、若いタレントばかりではなく、実績のあるトップクラスも獲得し、チームの基盤を固めるべき。もちろん、クロップの意見をできるだけ吸い上げながらだ。それでなければ、いくら監督の首を挿げ替え続けたところで、リバプールの本当の意味での復権はありえない。
そもそもリバプールは、監督を頻繁に代えるようなクラブではなかった。しかし、FSG政権になってからの5年間で指揮官交代は今回で4度目。中長期的なビジョンに欠けている何よりの証拠だ。
その中長期的なビジョンの中で、クロップも評価すべきだろう。過去に率いたマインツとドルトムントでは過度なプレッシャーもなく、ともに結局は7年間を過ごした。せっかちなファンやメディアはすぐに結果を求めるかもしれないが、監督には最低でも3年は与えるべきだ。実際、クロップがドルトムントでブンデスリーガ優勝を勝ち取ったのは、就任3年目のシーズンだった。
試合の結果だけに一喜一憂すれば、監督は自分の目指すサッカーを実現するのが困難になる。クロップに時間を与えれば相応の結果が付いてくることは、ドルトムントで実証済みだ。それだけに、クロップ政権が長期間に渡って存続することを、私は切に願っている。
文:ジェームズ・ピアース(リバプール・エコー紙)
取材・翻訳:松澤浩三
【著者プロフィール】
James PEARCE / Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース(リバプール・エコー紙)
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。