７月のJ３月間MVPに選ばれた久保藤次郎や、シャドーの横山暁之など、チームの顔となるスター候補も育ちつつある。須藤監督も７月のJ３優秀監督賞を受賞した。

　また今季は“うまさ”だけでなくインテンシティの強化にも力を注ぎ、１対１のデュエルでも負けないチームを目ざしてきた。今節に関しては、いわきの球際の強さ、圧力の大きさが「想定以上だった」（須藤監督）相手のクオリティや、台風の影響で４週間まともに試合ができず、試合勘が鈍っていた事情もあり、強烈な先制パンチを食らって完全にリズムを崩してしまった。だが、インテンシティの面が弱点になっているわけではない。

　そこの強さが出てきたからこそ、勝負強さが増して６連勝できた。やはり勝たなければエンターテイメントにはならない。チーム全体でその点にこだわっている。

　７月23日の第18節・北九州戦でチーム新記録の５連勝を成し遂げたあと、須藤監督は次のように語った。

「シーズンインから本当に厳しい練習をしてきて、なかなかうまくいかない時期もありましたが、そのなかでもブレずに練習に取り組んでくれた選手たちが、この夏場にやっと結果を出しつつあります。それに満足することなく、今も本当に厳しいトレーニングをやっています。それがいつ結果に出るかといったら、秋。実りのある秋のために今もがいています。暑かろうが疲れていようが走り切るということにプラスして、エンターテイメントなサッカーをもっと表現していきたいと思います」
 

　今節はいわきのような相手に対して、力の足りなさを痛感させられ、非常にショックが大きかった。だが、この１敗だけでこれまで積み上げてきたものが崩壊するわけではない。

「自分たちは６連勝しましたが、それは松本戦と今治戦の連敗から学んだものを教訓にしたことによって連勝できたと思います。残り14試合でおそらく今日のような試合はまたくると思いますが、そのときに今日の負けをしっかり生かせるかどうかで、この負けの価値が示されると思います」と、試合後に久保は語った。

　須藤監督も選手たちも、今着実に前進している道を変えるつもりは毛頭ない。もちろん、まだ昇格をあきらめる必要もない。

　今後は延期された２試合を消化するために日程がかなり厳しくなる。それでも、秋に向けての準備が実りとなって表われてくれば、また一歩「究極のエンターテイメント」に近づいていくはずだ。

取材・文●前島芳雄（スポーツライター）

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