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【川崎】窮地にこそ見えた光。劇的勝利の横浜戦の裏にあった指揮官の熱い想いとチームの覚悟

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年08月08日

未消化試合はふたつ。横浜に迫るチャンスだが…

試合終了間際に決勝弾を挙げたのはジェジエウ。仲間とサポーターのもとへと走った。(C)SOCCER DIGEST

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 谷口の言葉通り、川崎はホームで地の利を生かしつつ、強気に試合に入った。序盤からポゼッションを高めながら、左ウイングのマルシーニョの裏をロングボールで狙うなどワイドな展開も増やしていく。決して下がらずにベクトルは前へ。

 その迷いのない姿勢がひとつ結実したのが25分だった。CBの谷口が後方から右サイドへ素晴らしいフィードを送ると、走り込んだ山根視来がダイレクトでクロス。高くバウンドしたボールをゴール中央でL・ダミアンが頭で上手く合わせて先制に成功した。

 もっとも前半終了間際には、前への意識が裏目に出る。自陣の左サイドにいたチャナティップから右へのロングパスが通ると、ドリブルで持ち運んだ家長が大外をオーバーラップした山根へパス。山根がクロスを上げるも、クリアされると、そこから高速カウンターを受けてまさかの失点。1-0で折り返せる状況が、同点でハーフタイムを迎える、痛恨のプレーとなってしまった。

 試合後に当のシーンを山根に振り返ってもらったが、やはり精神的にダメージを受けたようだ。

「失点シーンに関しては本当、ラストプレーだったんですが、点を取りにいくところで僕があげたクロスが跳ね返されてしまいました。ああいうところの時間帯、『ラスト何分』とみんな声を出していましたし、相手が前向きにプレーできる選択をしてしまったのが、大きなミスで、跳ね返りがカウンターにつながったので、ちょっとショックは大きかったです。

 でも逆にハーフタイムに入れたことで忘れて、もう一回、45分、負けていたわけではないので、『前半、良いプレーができていたから、チャレンジしよう』という話をオニさん(鬼木監督)もされていて、上手く切り替えられたんじゃないかなと思います」

 後半は横浜に数度のチャンスを作られ、ポスト直撃のシュートも放たれた。レフェリーが足を痛めて交代するなど、試合がストップする時間も短くなく、どこか時計の針だけが過ぎていく展開でもあった。それでも川崎は途中からシステムを4-3-3から4-4-2に変更しながら、攻める気持ち、勝利への覚悟、執念を示し続ける。

 その想いが、最後の最後、結ばれた。それは苦しい状況でもリーグを止めずに戦ってきた対価であったのかもしれない。試合後、改めて鬼木監督に、コロナ禍での2試合が、このゲームにどう影響したのか訊いてみるとこう返ってきた。

「ひとつは浦和戦の緊急事態。毎日、人がどんどん減って、試合当日にも人が減ってしまった。そういうなかで自分自身で言うと、こういう状況だから、なんとか上手くやってやろうと、そういう気持ちになってしまったのかなと。

 その意味では自分の勝利への覚悟が足りなかったと感じ、そういう話を選手にしました。続くセレッソ戦は状況はそんなに変わりませんでしたが、覚悟を持って、今やれることを全員でやろうと、勝利のためにはなんでもやると、そういう話をしていました。

 そういう意味ではシステムでも、セレッソ戦では我慢強く戦わなくちゃいけないような形を取りましたが、それが今日のゲームに必ず生きるという話をしました。まさしく最後、そういうところで踏ん張りながら戦ってくれたと思います。

 自分自身の覚悟のところもありますし、選手が勝つために全員がやれることをやろうと、声も試合前のところから掛け合っていましたし、成長を感じられました。だからこそ(試合前の)取材の時も、自分の口から元気な声が出たという面があったと思います」
 
 劇的な勝利を掴んだ川崎は、消化試合がふたつ少ない状況で横浜との勝点差を8に縮めた。しっかり勝ち星を拾っていけば2ポイント差まで詰め寄れるチャンスを得たことになる。

 もっとも試合後、ここ一番を制するという意味で、2連覇中の経験が生きたのかとの質問に家長昭博が、らしい言葉で否定したように、厳しい戦いは続いていくはずである。

「いやーないですね。(経験を)今日生かせるなら、もっと普段から生かさないといけないですしね。今日勝ったからそういう話になりますが、じゃあ今までの試合はなんだったんだと言われたおしまいです。そういうアドバンテージは持っていないと思いますし、今、一番良いのはマリノスだと感じます。彼らのサッカーが一番良いと思うので、僕らはもっと謙虚にやらないといけない。今はそれが求められていると思います」

 家長が課題に挙げるのは安定した試合運びだ。

「まだ慌てちゃったり、試合のなかで頑張るところを履き違えていたり、スムーズにチームが回る状況ができるようになっていけば、みんなが頑張らずにスムーズに戦える展開になるのかなと感じます。一人ひとりが向上すれば、90分余裕を持ってやっていけると思います」

 予想外の事態が続いたここ数試合で得られたものは必ずある。ただ、冷静に見れば、課題を多く抱えているのも事実。劇的な勝利を今後にどうつなげていくのかは自分たち次第だろう。ここから王者が猛チャージをかけるのか。そうすればリーグ戦はより面白くなる。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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