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【川崎】敗れはしたが貫いた意志。陽性者続きベンチメンバー不足も“リーグを止めない”チームとしての覚悟

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年07月31日

ベンチのフィールドプレーヤーは2人。浦和に1-3で敗れるも…

代表帰りの谷口も中2日で先発出場。3失点したとはいえ、必死にピッチで戦った。写真:徳原隆元

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[J1第23節]浦和3-1川崎/7月30日/埼玉スタジアム2002

「体調不良者が幾人か出たり、怪我人が、故障というか違和感のある選手が結構多く、なかなか集中してトレーニングすることが難しい環境がここ数日間続いています。そのなかでもやるべきことを意識してやっています」

 アウェーの浦和戦の2日前、鬼木達監督は苦しい胸の内を明かしていた。クラブは7月28日にトップチーム関係者5人、翌日には4人が、新型コロナウイルスの陽性判定を受けたと発表。練習生らの協力を得てトレーニングを行なったというが、紅白戦など実戦形式のメニューは難しかったようだ。

 試合に臨めるのか。不安が広がる中で、それでも川崎が選んだのは“リーグを止めない”決断だった。ルール上では最低人数13人(GK1人を含む)を揃えれば試合は開催できる。

 この日の川崎のベンチに入ったのは5人。ただフィールドプレーヤーはMF山村和也、FW宮城天のふたりのみ。残りはGKの3人で、丹野研太は通常通り第2GKとして準備し、安藤駿介、早坂勇希のふたりはフィールドプレーヤーのユニホームを用意して、有事に備えた。
 川崎としては7月6日の鳥栖戦(ホーム)、16日の名古屋戦(アウェー)がともに、相手チームに複数の新型コロナウイルスの陽性判定者が出たということで延期になっていた。ただ、鳥栖、名古屋ともに管轄の保健所よりトップチームの活動停止の指導を受け、試合実施要項に定めるエントリー要件を満たせないことを理由に挙ていたが、後日、名古屋側が“活動停止の指導”は誤認だったと報告。波紋を呼んでいた。

 その中で指揮官、クラブ、選手たちも感じるところがあったのだろう。鬼木監督は7月28日時点で「正直、いろんな想いがあります。クラブには自分の想い、現場の想いを伝えているので、クラブから意志をリーグにしっかり伝えてもらっている状況です」とも話していた。

 一戦必勝で臨む、目の前の一つひとつの勝負にこだわり、勝ちを積み重ねていく。勝負に徹する指揮官の“厳しさ”がチームをより戦える集団へと進化させ、一方で常にゴールを目指し、サッカーの魅力を伝え続けるクラブとしての信念も抱き続けてきた。それは川崎サポーターだけなく、Jリーグ、日本サッカーを盛り上げたいとの想いにも通じる。こうした信条を胸に、川崎は2017年から2度のリーグ連覇など結果を残してきたのだ。

 国内では感染者数が増え、チーム活動の維持が難しくなり、試合延期に至っても仕方ない状況である。各クラブには各クラブの事情がある。そうした背景を承知のうえで試合後に鬼木達監督に話を訊けば、改めて想いも明かしてくれた。

「勝っていろいろ話せれば良かったですが……、ルールに沿ってやればこういう形で、人が減ってもやらなくちゃいけない状況ですし、そこに関しては自分たちで覚悟をもってやっていこうと。当然、自分たちの2試合が、なんて言うんでしょう……自分たちがこうやってキーパーをサブに入れたりする状況でいくと、簡単に延期になったり飛ぶことなのかなという想いは、当然みんなありましたし、自分自身もあったので、そこら辺の想いは選手に話しました。

 もしかしたら今日のゲームが意図的、意図的でないを別にして、問題提起のゲームになるかもしれない。だからそういうゲームになってもやっぱり全員で力を合わせて勝とうと。やっぱり目的は勝つことなので、いろいろありましたが、そこに集中して入れたと思います。ただ結果は残念な形になりました」

“リーグを止めない”との意識は、チーム全体でも共有する。キャプテンの谷口彰悟に訊いても、こう答が返ってくる。

「まずはこういう状況ですが、今シーズンが始まる前、『リーグを止めない』という話もしてきました。Jリーグの規定がしっかりあるなかで、自分たちはできる限りの最高の準備をしていくところに頑張ってフォーカスして準備してきました。うん、難しい状況でしたが、試合を開催するということはひとつこういう時期に、コロナ禍で、大きな決断だったと思います」

 ただ、谷口は試合内容は別の問題として捉えるべきとも続ける。敗戦で消化試合ふたつ少ないとはいえ、この日、浦和に1-3で敗れたことで首位の横浜とは勝点11差に離れた。悲願のリーグ3連覇に向けては厳しい状況に置かれたと言わざるを得ない。

「今日の試合の内容はやっぱり別で考えなくてはいけないし、もちろん控えの選手で、フィールドプレーヤーが2人しかいない状況は理解していましたし、そのなかでどう90分を戦っていくかは詰めが甘かったなと。結局試合の入りで0-2になっているわけで、一番やってはいけないことをしてしまった。そこはまだまだチームとして甘さがあるなと。

 非常に残念な結果ですが、そこで学んでいかなくてはいけないですし、ただこの敗戦ですべてが終わったわけではないです。まだまだ優勝というモノは絶対に諦めてはいけないですし、諦めたらそこで終わりなので、どんな状況であろうと諦めずに食らいついていくというところは、引き続きやっていきたいです。今日は切り替えて次に進んでいく。その姿勢が次につながってくると思います。絶対に下を向かずに前だけを向いてやっていきたいです」

 試合開催に向けてジレンマ、葛藤があったはず。3連覇へもう横浜に離されるわけにはいかないシチュエーションで、少しでも良い状態でゲームに臨みたかったのが本音だろう。それでも、どんな時もピッチに立ち続ける、サッカーで伝え続ける、Jリーグを盛り上げ続けるとの、クラブとしての信念を見た気がした。

 7月末の中断期間に感染予防を徹底したうえで、スタジアムで「ファン感謝デー」イベントを催したことに賛否両論の声があるようだが、日々、支え続けてくれる人たちとの関係性を何より重視する川崎らしい判断だったとも感じる。

 先に目を向ければ中3日で、ルヴァンカップのアウェーでのC大阪戦が待ち(ベスト8)、その4日後にはホームで首位・横浜との重要なゲームを控える。8月は7試合を戦う、なかなか厳しいスケジュールだ。今後は2種登録選手らを生かす必要性もあるかもしれない。

 それでも今回の浦和戦では敗れはしたが、貫いた意志が、今後につながっていく――。そうであると信じたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

【J1第23節 PHOTO】浦和 3-1 川崎|浦和がホームで3ゴールを奪い快勝
 
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