次にボランチ対決。前橋育英のボランチと言えば松田直樹氏（元横浜ほか）、細貝萌（群馬）、鈴木徳真（C大阪）など毎年のように名手を輩出しているが、今年もまさにチームの心臓として絶対に欠かせない存在となっている。

　ずば抜けた状況判断能力を持ち、パスセンスと守備力に長けた徳永涼（３年）と、豊富な運動量とポジショニングで攻守をつなぐ青柳龍次郎（３年）はともにボールの落ち着きどころで、攻撃の起点としてハイレベルで機能するコンビだ。

　なかでも徳永は戦術眼に長け、冷静にピッチ上で選手全体の立ち位置を把握して攻撃をコントロールする今大会ナンバーワンボランチ。このコンビに加え、昨年は徳永と不動のコンビを組んでいた根津元輝（３年）も春先に負った後十字靭帯損傷の大怪我から復帰し、途中出場で持ち前のキックセンスを披露するなど、盤石の状態でチームをコントロールする。

　対する帝京は、田中遥稀（３年）と押川優樹（３年）のダブルボランチがチームの中枢で、押川の機転の利いたポジショニングと田中の正確無比な右足のキックでパスを繋ぎ、遅攻と速攻を状況を見てコントロールするなど、全国トップクラスのコンビだ。
 

　しかし、準々決勝の岡山学芸館（岡山）戦で押川が負傷し、準決勝の昌平（埼玉）戦はベンチで試合を見つめた。押川がもし、決勝不在となるとかなり痛いのは間違いない。だが、準決勝でスタメン出場をした藤﨑巧士（３年）は、中盤の潰し屋となりつつ、果敢に２トップに絡んで分厚い攻撃を引き出すなど、「誰が出ても遜色ないチームになっている」と日比威監督が語ったように、押川とは違った個性を発揮。新たなエッセンスをチームに加えたことは大きい。

　どちらのボランチが優位性を発揮し、ゲームをコントロールするのか。ともに共通するのは守備力で、危機察知能力も球際の激しさも兼ね揃えるコンビだけに、高度な駆け引きとバチバチの球際の攻防が繰り広げられるはずだ。

　この２つ以外にも多くの見所がある決勝のカード。前橋育英がプレミアリーグEASTで揉まれた実力を発揮するのか、それとも帝京が19年ぶりの優勝で、選手権とインターハイを合わせた10個目の星を刻み、名門復活の雄叫びを高らかに上げるのか。

　泣いても笑ってもラストゲーム。決勝にふさわしい実力派チームの激突は間違いなく最高のゲームとなるだろう。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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