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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の三十六「人材枯渇の裏にある評価の矛盾」

カテゴリ:Jリーグ

小宮良之

2015年09月15日

反発力は日本サッカー特有の現象であり、アドバンテージとも言える。

前回の京都合宿でU-22代表に選ばれた鎌田。アンダー世代の代表経験もない、正真正銘の初選出だったが、逆に言えば「逸材を選べていなかった」というスカウティングに問題が潜む。 (C)SOCCER DIGEST

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 では日本サッカー全体の問題として、適正なスカウティングで選手を選んでいるのだろうか。
 
 例えば前回の合宿で、鳥栖の鎌田大地はU-22代表候補に初めて選ばれた。それ以下の世代も含めて代表の経験がなく、今回が正真正銘の初選出。その事実に首をかしげる。鎌田はリオ世代の選手と比べ、突出した才能の持ち主である。京都に敗れた試合でも、ひとり輝きを放ち、アシストで一矢を報いていた。練習試合のパフォーマンスに大した意味はないが、「逸材を選べていなかった」というスカウティングに問題は潜む。
 
 サッカー選手として優れているのか?
 
 その判断基準は、それぞれの監督、スカウトなどによって微妙に異なる。しかしプレーセンスを評価し、可能性を見抜くという点での基礎は同じで然るべきだろう。そこにズレがある場合、選手強化は遅々として進まず、かえって混乱する。
 
 日本サッカーはこの10年、ポゼッションサッカーを重視するあまりに過激化し、本来はゴールを奪うための手段が目的、信仰にまでなってしまった。相手より良いポジションを取ってパスを回し、崩す、という考え方は日本人の体格や性格を踏まえれば正しい。ところが、「GKまで抜いてしまえ」という蒙昧なポゼッション論が崇められる事態が起きてしまった。
 
 その風潮によって数年間、若い選手の戦闘力が著しく低下。パスをつなぐだけの選手がもてはやされてしまい、そうした選手はプロでは通用していない。
 
 育成段階での評価選考が、どこかでズレていた。そのプロセスでふるい落とされた選手が果たして何人いたのか――。もっとも、そんな状況でも鎌田のように台頭する選手がいるのだから、日本サッカーの未来は真っ暗ではない。
 
 皮肉な話ではあるが、本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司ら日本代表の中心選手たちは、むしろ正当な評価を受けず、不遇のなかで自分を突き詰めることで、その熱を飛躍する力にも換えている。この反発力は日本サッカー特有の現象であり、アドバンテージとも言えるのだろう。
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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