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【ブラインドサッカー日本代表】障がい者スポーツに「勝負の駆け引き」を求めるのは酷か?

カテゴリ:特集

海江田哲朗

2015年09月08日

障がい者スポーツに対して、ひたむきで純真であることを求めすぎてはいないか。

今回のIBSAブラインドサッカー・アジア選手権の会場には、多くの観戦者が訪れた。世間の関心の高さが窺える。写真:海江田哲朗

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 これを受けて魚住監督は「中国とイランの引き分けという結果にはなにも申しません。ただ、試合内容については不満です」とコメントを残している。このあたりはいかにも教育者の顔である。魚住監督の本職は都立調布南高の教員だ。勝負師であれば、さもありなんという感想になる。
 
 日本は謹厳実直なチームだ。勝者に見られたしたたかさは皆無で、一心に強さを求め、そして敗れ去った。例えば、中国やイランと同じ立場になったとして、同様のやり方を選び取るか。否である。最大限にリスクマネジメントしつつ、正攻法で勝ちに行くに違いない。それは日本の美質といえる。そのほうが長い目で見れば将来につながるという考え方を私は否定しない。
 
 背景に浮かぶのは、障がい者スポーツに注がれる社会の視線だ。
 
 日本代表の選手たちは総じて利発で、礼儀正しい。ひたむきな姿勢が多くの人々に好感を与え、後押しをしたい空気を生んだ。だからこそ豪雨のなか、あれほど多くの観客が代々木に駆けつけた。スカパー!の生中継で日本の戦いを見守った人も多く、また新たなファンを獲得しただろう。それらはブラインドサッカー関係者の努力の賜物である。
 
 だが、一方で私はこうも思うのだ。障がい者スポーツに対して、ひたむきで純真であること、無垢であることを求めすぎてはいないか。本来は汚い部分も含めての人間ではないのかと。障がい者を扱う映画やノンフィクションの大半は、彼らのピュアな部分をクローズアップして描く。殊更、美しく、清廉であらねばならないという無言の圧力がそこにはある。
 
 障がい者の生活を描いた名著、河合香織の『セックスボランティア』(新潮文庫)、渡辺一史の『こんな夜更けにバナナかよ』(文春文庫)といったリアリティに満ちた世界観がスポーツにあってもいいはずなのだ。
 
 彼らが良き人でなければならない理由はない。健常者、障がい者の分け隔てなく、いい人がいれば悪い人もいる。真っ正直な奴がいれば、ズルい奴もいる。そういった当たり前の現実を受け入れていくのも、ブラインドサッカーが実現を目指すダイバーシティ(多様性)のひとつと私は考える。
 
取材・文:海江田哲朗(フリーライター)
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