34本で3得点……日本のシュートはなぜ決まらないのか?

カテゴリ:日本代表

熊崎敬

2015年09月04日

「ゴール前では手早く」の強迫観念? 足りない変拍子。

香川とのワンツーで惜しいチャンスを作ったのは途中出場の宇佐美。こうした変化が、日本には足りなかった。 (C) SOCCER DIGEST

画像を見る

 ミドルシュートに加えてもうひとつ気になったのは、崩しの形が一本調子だということ。
 
 勢いに任せて敵陣に突入していった前半に比べると、後半は横パスを回しながら弱点を探ったり、互いの呼吸で崩そうとするシーンは増えた。だが、まだまだ物足りない。
 
 この試合に限らないことだが、日本はスピードに頼りすぎている。
 
 例えば前半は本田との連携から、酒井が何度も右サイドをえぐった。右ポストに近い、もう一手で詰みという絶好のポジションを何度も取っているのに、クロスはほとんど味方につながらなかった。スピードに任せて、単調にクロスを上げているからだ。
 
 スピードを緩めて中の選手と呼吸を合わせてもいい。だが、そうした駆け引きは見られなかった。
 
 酒井に限らず、日本の選手はゴール前に行くほどスピード頼みになり、その結果、肝心なところで空振りやキックミスをしてしまう。プレッシャーの厳しいゴール前は、手早くプレーしなければならないという強迫観念があるからだろう。
 
 だが、考えてほしい。相手はカンボジアなのだ。もうちょっと落ち着いてプレーしてもよかったはずだ。
 
 87分、宇佐美が香川との小さなワンツーから左サイドを破るという場面があった。キーパーに当ててしまったシュートの拙さはともかく、ワンツーは遊びのようにリラックスしたものだった。肩の力を抜き、落ち着いてプレーすれば、あれくらいのことはできるのだ。
 
 日本のプレーは観ていて次が予測できる。
 
 それはプレーに変拍子がないからだ。不意に立ち止まる、ボールを浮かせてみる、角度を変えるといった変化がない。香川は頻繁に切り返しをするが、それも一定のリズムの中でのこと。敵はすぐに慣れてしまう。5メートルのパスでも普通に出したくないという、ロナウジーニョのような天性の遊び人がいない。
 
 本来、遊びであったはずのサッカーはプロリーグができたことで教わるものになり、遊びの精神がなくなっていく。テクニックはあるのに駆け引きができない、一本調子のサッカー。これを変えるのは容易なことではない。
 
取材・文:熊崎敬
【関連記事】
【識者コラム】様々なレベルの試合が混在するアジア。今後はテーマに即した選考・采配が必要
【藤田俊哉の目】最大の問題は決定力不足ではなく、海外組を脅かす存在がいないこと
【サッカーダイジェストの視点】例えば香川外しは現実的な選択肢か
金田喜稔がカンボジア戦を分析|オーソドックスすぎた日本の攻撃は、格下でも守れるレベルだった
【セルジオ越後の天国と地獄】ホームでたったの3点。今の日本からはやりたいことが見えてこない
「チャンスの作り方が、あまり上手くない」。エース本田が語った根深き課題とは?

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ