近年、ピケの存在は補強戦略にも影響を及ぼしていた。マスト事項として位置付けられていたわけではないが、クラブ内にはピケの居心地を悪くしたり、レギュラーの座を脅かす補強は見送るという暗黙の了解があった。３年前にマタイス・デリフト（現ユベントス）の獲得を断念したのもが同様の理由からである。

　フランスの「レキップ紙」によると、ピケの月給は約233万ユーロ（約３億円）。しかもその額は在籍年数に応じて、毎年自動的にアップするものだという。ピケは減俸を受け入れる姿勢を示しているが、先述した通り、シャビはそれ以上にコンディションとピッチ外での過ごし方に懸念を示している。先日発表されたシャキーラとの破局も「プロフットボーラーに相応しくないライフスタイルを送っている」という印象を裏付ける結果になっている。

　ピケは引退について、かつてエル・パイス紙のインタビューで「控えの立場で現役を続けるつもりはない」と明言している。シャビとの２者会談の後、否応なくこの発言がクローズアップされる形になっているが、振り返ると当の指揮官も、ルイス・エンリケ監督の下で同様にチーム内での序列が低下する中、バルサでのラストとなった14－15シーズンを過ごした。しかしピケの去就問題は、そのシャビ、その３年後の2018年に退団したイニエスタよりも波乱含みの様相を呈している。
 

　メッシの電撃退団から間もなく１年が経過する。バルサでは長きにわたってそのかつてのエースを頂点とする絶対的なヒエラルキーが確立されていたが、シャビはその聖域にメスを入れる必要性を訴えている。

　しかし、それもベテラン勢とポジションを争えるだけのポテンシャルを持った新戦力を獲得できなければ机上の空論に過ぎず、つまりはすべてフロントの力量にかかっている。シャビから直接名指しされた格好のピケは、相手が同意しようがしまいが、来たる22－23シーズン、変わらず不動のレギュラーとして活躍し続けることができることを証明する覚悟だ。

文●ラモン・ベサ（エル・パイス紙バルセロナ番記者）
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

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