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日本代表と対戦するセレソン、W杯予選で“最高成績”もブラジル人記者が不安な理由【現地発】

カテゴリ:日本代表

リカルド・セティオン

2022年06月01日

迷信や都市伝説ではなく根拠がある

予選では約100人の選手を起用したチッチ監督。(C)Getty Images

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 ただ記録を喜ぶ一方で、ブラジル人はある不安を抱えている。ブラジルには、予選での結果と本大会の結果が反比例するというジンクスがあるのだ。

 例えば、1950年の自国開催のW杯。ブラジルは大会予選で南米最高の成績をだしたが、本大会ではウルグアイに決勝で敗れた。いわゆるマラカナンの悲劇だ。ブラジル人は大きなショックを受け自ら命を絶つ者までいた。

 94年のアメリカ大会予選。ブラジルは出だしで躓きエクアドルに引き分け、ボリビアに負け、規律違反でメンバーから外されていたロマーリオに懇願しチームに戻ってきてもらい、彼のゴールでようやくW杯行きを決めた。だが、本大会ではロベルト・バッジョを擁するイタリアを破って優勝したのは皆さんもご存じだろう。

 ところが予選を戦わなかった次の98年大会は、決勝でフランスに0-3の大敗を喫してしまう。

 2002年の日韓大会の予選では、W杯連続出場記録が途絶えてしまう可能性さえあった。最終戦のベネズエラ戦で柏レイソルのエジウソンがゴールを決め、やっと出場権を手に入れたのだ。しかし箱を開けてみれば、ブラジルは本大会で優勝を果たした。
 
 これはただの迷信や都市伝説ではなく、根拠があるものだと私は考える。良くも悪くもブラジル人はとてもエモーショナルだ。感情に流されやすい。予選で良い戦いをすれば、自分たちは強いのだと尊大になり、悪い結果を出せば「なにくそ」とやる気を出す。

 先にも述べたが南米には10か国しかない。互いのことは知り尽くしている。予選はその中で行われる。言うなれば井の中の蛙だ。南米の中でいかに強くとも、世界でどれだけ強いのかはわからない。W杯となると、ヨーロッパの強豪やあまり情報のないアジアやアフリカのチームとも対戦しなくてはいけない。

 若手を多く抱えた現在のブラジル代表も、未知数だ。自分たちは強いと信じこんできたチームが、ヨーロッパの強豪と当たって出鼻をくじかれた時、選手たちのメンタルはかなり打撃を受けるだろう。14年のW杯でドイツに1-7で敗れたのもそれと関係がなくはない。

 ブラジルが入ったグループGはスイス、セルビア、カメルーン。奇しくもスイス、セルビアとは前ロシア大会でも同グループだったが、どちらも確実に強くなっている。前者は実質的に予選でイタリアを葬り去っているのだ。

 ブラジルの人々は、このグループを非常に危惧している。どこのチームもブラジルを倒せば、決勝トーナメントへの可能性が高くなる。人生を懸けて向かってくるだろう。もしそんな中でミスを起こせば致命傷になりかねない。その時若い選手たちはメンタルを立て直すことができるか。それが一番の心配である。

 チッチ監督は、W杯までに南米以外の強豪国との対戦を臨んでいたが、相手は韓国と日本となった。歴史を繰りさえなければいいのだが。そう思っているブラジル国民は少なくないのだ。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。

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