グラスナー監督はファーストレグ後に、「我々は控室から出てきて、６万人満員のアウェー戦に臨み、試合開始１分で先制することができた。前からプレーをし続け、勇敢にチャレンジしたからだ。こうした選手とともに取り組めることを誇りに思う。チームのプレーはとても印象深いものがあった」と満足げに振り返っていた。

　だが、まだ半分が終わったところだ。勝負はまだついていない。セカンドレグに向けてグラスナー監督は「しっかりと分析をし、自分たちの夢を形にして見せたい。最低限でもファーストレグと同じくらいのレベルのパフォーマンスを引き出さないと。それどころかさらにあげる必要があると思っている」と警戒心を高めている。

　カギを握る選手の一人は、やはり鎌田大地だろう。グラスナー監督はロンドンでの試合後に、「いいポジションプレーができていたし、狙うべきスペースを攻撃することができた。いいバランスが保てていたと思う。自分たちでボールを持っているときには相手のマークを外し、上手く数的有利の状況を作り出すことができた。その点で特に鎌田、（ジブリル）ソウ、（セバスティアン）ローデの３人の名前をあげたい。彼らのポジションプレーが状況を解決してくれた」と褒めていた。

　セカンドレグでも相手に奪いどころを与えずに、中盤で優位に立つ局面を多く作れるかどうかが重要なポイントとなるだろう。
 

　地元紙からの評価も高い。『フランクフルト・ルンドシャウ』紙が、殊勲の活躍を次のように称えていたのが印象的だ。

「ロンドンにおけるフランクフルトのヒーロー、鎌田大地はまたしても笑顔とともに幸運を呼び寄せた。ゴールに向かってひたむきで素早い動きがそこにはあった。54分に決勝点となるゴールを決めると、広告板を飛び越えて、ロンドンへともにやってきたファンの元へと飛び込んだ。前からはスタンドのファン、後ろからは喜びながら駆け寄ってきたチームメイトと両サイドから押しつぶされながら、鎌田は輝いていた」

　相手のプレスを受けそうでも、研ぎ澄まされた感覚で知覚すると、瞬時にそれを外していく。相手を寄せ付けず、その裏をどんどん取っていく。ボールを収めてタメを作りながら運ぶのだが、持ちすぎになることもない。インテリジェンスの高いポジショニングとプレーで相手に狙いを絞らせない。そしてゴール前にもタイミングよく顔を出していく。

　マルクス・クレッシェSDは「決勝進出という夢をかなえるために、フランクフルト中が僕らをサポートしてくれることを祈っている」と話していたが、まさに総力戦だ。18-19シーズンは準決勝止まりだったEL。攻撃の軸として、鎌田の活躍にかかるファンからの期待は非常に大きい。今度こそ、決勝の舞台にたどり着いてほしい――。

文●中野吉之伴

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