前半アディショナルタイムにはスペイン代表MFのペドリをスムーズに振り切ったり、後半には複数でプレスを掛けられながらも、相手の逆を突くターンの連続でボールを失わない。鎌田が呼ぶと味方からすぐにボールが入る。そしてボールを受けると、鋭く次の展開を演出していく。

　他にも、左サイドを抜け出してゴール前に好パスを通したり、ルーズボールをダイレクトで左サイドのセルビア代表フィリップ・コスティッチへ渡したりと貢献度の高いプレーが続けた。相手ビルドアップからの縦パスを読みの鋭さでインターセプトをし、味方のビックチャンスに結び付けるというプレーもあった。

　それにしても、鎌田という選手は、どのポジションで起用されても自身の良さを出すことができる。本職はトップ下だが、インサイドハーフでも両サイドの攻撃的なポジションでもそれこそトップの位置でもチームに必要な効果的なプレーをしてくれる。
 

　選手にとって普段と違うポジションでプレーするというのは、普段とは違う景色でプレーするということになる。自分の視野から入ってくる情報も、相手からのプレスに対する感じ方も、味方ボールを持った時のスペースへの動き方なども変わってくる。それを感じさせずに、そしてどのポジションで出ても自分の特徴を出せるというのは極めて優れた能力ではないだろうか。

「うちを相手にプレーをするのはやりにくいと思う。攻守のバランスを見出すことが大事だったが、戦術的にうまくプレーをしてくれた」とチームパフォーマンスをねぎらっていたグラスナー監督。そのなかで、鎌田は攻守両面で貢献度の高いプレーを見せてくれた。

　長い距離を走れるし、当たりにも相当強くなっている。ゲームの流れが落ち着かない時に、確実にボールを収めて相手をいなしてくれる時間は、チームにとって非常に貴重なのだ。ゴール前に出てくる頻度がもう少し増えてくると、さらに怖い選手になるのは間違いない。

　試合終盤、スタジアムで記者席近くに座っていたファンが僕に話しかけてきた。

「カマダはファンタスティックだ！」

　ホームでの一戦を１-１で引き分けたフランクフルト。アウェーでのセカンドレグは簡単ではない。だが、そうした試合こそ鎌田のファンを熱狂させるプレーが必要になるはずだ。

取材・文●中野吉之伴

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