中盤での拮抗した駆け引きが続くなかで、東福岡は20分にMF三宅海斗が個人技から鮮やかな先制弾を挙げる。以降、互いに惜しいチャンスを作り出したが、ハイレベルな駆け引きに基づいた攻防のなかでも、そこをかい潜ってチャンスを作り出す力は、さすが強豪校同士の対決と思わせるものだった。
 
　試合は市船が後半アディショナルタイムのほぼラストプレーのFKを、MF工藤友暉が決め、同点に追いつくという劇的な展開に。延長戦になっても、中盤の３対３は熾烈を極めた。90分の戦いで３対３のメンバーは交代されることなく、ポジションも変わらずに最後までピッチに立ち続けたことが、この攻防の凄まじさ、互角の勝負を証明していた。
 
「６番（椎橋）と７番（原）は、本当に常に頭を使って、冷静にポジションを取っているのが分かった。だからこそ、こっちもより頭を使わなければいけなかった」（藤川）
「６番のマークは本当にキツかった。なかなかはがせない状況でしたが、チームでパスが出せるのは（藤川）虎太朗と僕なので、お互いの距離間をより意識してプレーしました」（中村）
 
　東福岡側がこう語れば、市船側も椎橋が相手の強さを認めつつ、課題を次のように語る。「もし僕が10番（中村）と６番（藤川）だけでなく、落ちてくるFWの７番（毎熊晟矢）や、４番（鍬先）まで見ることができれば、もっと良い守備ができた。自分の守備範囲の狭さを感じたし、相手のFWなどを消しながらも、２シャドーにパワーを持って行ける守備ができるような選手にならないといけないと感じた」
 
　ハイレベルな戦いだったからこそ、成長への意欲と、さらなる向上心を引き出し合うことができた。勝負はPK戦で決着がついたが、決勝にふさわしい好ゲームを実現させたのは、間違いなく両チームの中盤に君臨した３人ずつのキャストたちだった。
 
取材・文：安藤隆人（サッカージャーナリスト）