前述したようにマドリーはそうなることを想定しているので、本稿においてもヴィニシウスがEU圏外枠登録を外れることを前提に話を進める。その場合、現時点でのタケの復帰の確率は30％だ。決して高いとは言えないが、過去２年に比べると、可能性は増している。

　ここから復帰を手繰り寄せるには、まず残りのシーズンで、良いプレーを見せること。そのうえで、プレシーズンでカルロ・アンチェロッティ監督を驚かせることが重要だ。いずれも本人次第で実現が可能だが、しかしその２つの条件を満たしたとしても、タケの復帰は他の選手の去就とリンクし続けるという状況に変わりはない。

　まずタケに直接関係するポジションを見ると、今シーズン限りで契約が満了するガレス・ベイルとイスコの退団が確実視されている。一方、新戦力に目を向けると、キリアン・エムバペの加入はもはや決定事項だ。したがって人数的にはマイナス１となり、その穴をタケが埋めればいいわけだが、事はそう単純ではない。
 

　タケが本職とする右サイドのポジションは特に人材が充実しているからだ。新たな選手を迎え入れるのであれば、マドリーはさらに戦力のスリム化を図りたいはずで、そしてその筆頭候補がヴィニシウスの覚醒で、右サイドに押し出された格好のエデン・アザールだ。マドリーの希望は売却で間違いない。最大のネックは、手取り1500万ユーロ（約18億円7500万円）という巨額の年俸で、アザールが退団を前向きに検討しない限り、実現はかなり難しいだろう。

　ミランにレンタル移籍中のブラヒム・ディアスもポジション争いのライバルの１人だ。ただ彼の場合は、２年間のレンタル契約を結んでいる。カタール・ワールドカップ出場を目指しているブラヒムはこのタイミングでの環境の変化を望んでおらず、レンタル契約を破棄して１年前倒しで復帰する可能性は低い。

　さらにもう１人、タケの去就の鍵を握るかもしれない選手がいる。マルコ・アセンシオだ。彼は良いシーズンを送っているが、2023年６月に契約が満了する。つまり契約を延長するか、市場に売りに出すが今夏が重要なターニングポイントになる。その２つ以外のオプション、つまり契約満了を待ってフリーで退団するという選択肢は、マドリーにはない。現時点で契約延長オファーは提示されていないが、今後数か月のうちにマドリーはアクションを起こすはずだ。

　そうなった場合、金銭面で折り合いがつくことはもちろん、エムバペの加入によって変化することが避けられないチーム内での新たな立ち位置を受け入れるかどうかも交渉における重要なポイントになりそうだ。アセンシオの希望は残留だ。したがって退団の可能性はアザールよりも低いが、まったくゼロというわけではない。