磐田のほうは開幕戦でデュエルに強い選手が揃う福岡と対峙し、ホーム開幕戦は鋭いカウンターを武器とする清水戦ということで、伊藤彰監督の掲げる、自分たちでボールを動かしながら立ち位置を変化させる攻撃スタイルをぶつけるには格好の２連戦だった。

　清水戦の終盤に山本義道とファビアン・ゴンザレスが立て続けに退場となり、９人で戦う不利はあったが、鈴木唯人に決められた１失点目、さらに中山克広にスーパーゴールを決められた２点目、ともにカウンターの対応に問題が出た結果ではある。

　ただ、それ以前に、ワイドにボールを回しながら中央を崩す形が福岡と清水のタイトな守備を破りきれていないことのほうが問題で、そこはJ２で通用していたものが、すんなりと通用しないのがJ１であることを伊藤監督も認識しているようだ。

　もっとサイドチェンジなどを使って相手のブロックを揺さぶることも大事だが、ベースとして攻撃のテンポを上げていくこと、さらにはボールを奪った時にゴールを狙う意識を強めることで、相手のディフェンスにそこの脅威を与えながら回すことも有効になる。その意味では狙える時はカウンターも狙っていくことが必要になる。

　磐田と京都の違いは、ともにベースがありながら、京都のほうが状況に応じたオプションの多さ、柔軟性を最初から持ってJ１の舞台に臨んでいるということ。ここは過去に湘南ベルマーレでJ１を経験し、ルヴァンカップのタイトルも獲得している曺監督の経験が生かされている。
 

　その京都としても前からボールを奪い、ショートカウンターでゴールを仕留める形を研ぎ澄ませていかないと、残留争いより上のところで勝負することは難しい。京都には20歳の川﨑颯太、23歳のアピアタウィア久と麻田など、主力にも複数の若手がおり、ベンチの平均年齢も若い。そういった意味でシーズン中の伸びしろが期待できる。

　磐田も現在の基本スタイルを変える必要はない。最初に福岡と清水というどちらかと言えば堅守速攻の度合いが強いチームと戦えたことで、カウンターのリスクに向き合いながら、攻撃面で何を加えていかないと通用しないかは指揮官を含めて理解できたはずだ。

　ただし、今後また別の強みを持つJ１のチームが相手になることも想定しておく必要がある。横浜F・マリノスや浦和レッズなどを相手に、ボールを持たれる側になった時に、どこまで自分たちのスタイルを押し出して、どこから臨機応変さを入れていくのか。そうした課題にも向き合うことになるだろう。