伝説となった雪の決勝。“赤い彗星”金古聖司がいま明かす「24年目の真実」

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2022年01月08日

天敵・木島良輔。拭い切れなかった夏の残像

1997年度のインターハイ決勝。金古(左)は帝京の10番・木島(右)の切れ味鋭いドリブルに翻弄され続けた。(C)SOCCER DIGEST

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 2年生ながら守備の要を担っていた金古は正直、帝京とは当たりたくなかった。木島にさんざん振り回された、夏の苦い記憶が頭の片隅にこびりついていたからだ。

「アップをはじめた時くらいですかね、雪が降りはじめたのは。やっぱり木島さんにやられたのがトラウマになっていたんで、個人的には雪を見て『これはラッキーだな』って感じました。それくらい苦手意識があった。独特のリズムを持っていて、とにかく相性が悪かったんです。

 だからこそ、志波先生は3バックにしたんだと思う。手島さんが後ろにいる安心感はすごく大きかった。チヨ(千代反田)と僕で、木島さんと金杉(伸二)さんの2トップをゾーンで見る感じでしたけど、ガツンと思い切って強めに行けましたから」

 とはいえ、キックオフ時点で雪はさらに勢いを増し、前半の東福岡は逆風にも晒されて視界確保さえままならなかった。自慢の地を這うようなパスワークも、豪快なサイドアタックも、鳴りを潜めたままだ。

 一方、帝京の意図するサッカーはシンプルだった。

 通常なら主将である中田浩二の展開力をベースに、ターゲットの金杉の後方から木島や高嶋清善、藤田芳正らがどんどん飛び出して、持ち前の機動力を発揮するところだが、この日は完全に割り切った。徹底したロングボールで金杉に集め、怒涛のパワープレーを選択したのである。

 金古は「きっとそれしかない、と分かっていました。だから(ボランチの)宮崎(啓太)さんには、近くにいてセカンドを拾ってください、とも話していました」と振り返る。
 

 だが、それでもやられた。

 前半21分、帝京の中田に利き足とは逆の右足でクロスを上げられる。滞空時間の長い山なりのボールに対して、目測を誤った東福岡GK玉浦寛敏が飛び出してしまい、先に頭で合わせた金杉に無人のゴールへ流し込まれてしまったのだ。

「結果的に、ちょうどいいところに落とされました。玉浦さんは逆風で見づらかったんだと思います。しょうがない失点で気にする必要はなかったけど、帝京にしたら理想通り。ちょっと焦りましたね。まだ雪に慣れていなかったし、チームとしてどうやって崩せばいいんだろうって、まだ僕らは掴めていませんでしたから。

 ただ、一人ひとりが手探りで戦っているなかでも、放り込みはしたくないって思いはみんなにあった。あくまで僕たちのサッカーはコンビネーションで崩す。先生がよく『グラウンドに絵を描け、線が切れないように繋げ』と話していて、あの時もそれをひたすら追い求めていました」
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