伝説となった雪の決勝。“赤い彗星”金古聖司がいま明かす「24年目の真実」

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2022年01月08日

金古聖司と振り返る「雪の決勝ドキュメント」<前編>

雪が舞う国立競技場に終了のホイッスルが鳴り響く。24年前、東福岡が前人未到の3冠を成し遂げた瞬間だ。(C)SOCCER DIGEST

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 1998年1月8日、国立霞ヶ丘競技場。第76回全国高校サッカー選手権大会決勝は、宿命対決となった。インターハイと全日本ユースを制して、前人未到の3冠に挑んだ“赤い彗星”東福岡。対して逆の山から雄々しく勝ち上がってきたのは、“カナリア軍団”帝京だった。誰もが名勝負を期待したファイナルはしかし、記録的な大雪に見舞われる──。日本サッカー界のレガシーとなった“雪の決勝”。いま24年の時を経て、ヒガシの守備の要だった金古聖司とともにその記憶を辿る。<全2回/文中敬称略>。

―――◆――◆―――

 ふたりの名将はともに腕を組みながら、真っ白に染まったピッチを眺めていた。

 あとからやって来た東福岡の志波芳則に向かって、大先輩である帝京の古沼貞雄がポツリと本音を漏らした。

「う~ん……、やりたくないねぇ」

 志波は秘めた想いを隠しつつ、静かに相槌を打った。

「ホント、そうですねぇ」

 キックオフ1時間前の、何気ないやり取りである。

 志波の脳裏に蘇ったのは、インターハイ決勝の壮絶戦だ。灼熱の京都で繰り広げられた大一番で、東福岡は幸先良く2点を先取した。だが、帝京のドリブラー・木島良輔に最終ラインをズタズタに切り裂かれると、その背番号10に1得点・1アシストを許して、あっという間に2-3とゲームをひっくり返されてしまう。

 後半半ばに退場者を出した相手から2ゴールを奪ってなんとか逆転勝利を掴んだものの、公式戦無敗記録(49勝2分け)を達成した1997年度の東福岡にあって、もっとも苦しめられたゲームだった。
 
 このまま雪が積もれば、帝京最大の武器である木島のドリブルは活かされない。一大決戦を前に志波は、準備していた秘策を選手たちに明かした。代名詞である4-1-4-1システムを捨て、やや後ろに重心を置く3-2-4-1を採用。手島和希をスイーパーに配置して、金古聖司と千代反田充をストッパーで張らせた、言うなれば“木島包囲網”だ。さらに雪のピッチによって、威力は半減される。つまりは二段構えで、唯一無二の不安要素を取り除いた。
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