【私が見た阿部勇樹】先頭に立つわけではないのに誰もが頼りにした男…その求心力の裏側

カテゴリ:Jリーグ

轡田哲朗

2021年11月25日

ルヴァンカップの優勝時に駆け出したのはキッカーのほうでなく…

引退会見では今後の道を語る。選手時代とは違う新たなチャレンジに。写真:田中研治

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 そうした思いが試合のピッチにも現れて伝わるからこそ、浦和のファン・サポーターも信頼し続けたのではないだろうか。そして、阿部自身もその信頼や応援に応えようと全力でのプレーを続けた。2016年ルヴァンカップの決勝戦での優勝はPK戦にもつれ込んでのものだったが、遠藤航のキックが決まった瞬間に阿部はそちらではなく、180度向きを変えて浦和のファン・サポーターの集まるゴール裏のほうへ駆け出していった。翌年のACL優勝の時に、「この真っ赤なスタンドでみんなが喜んでくれているのが、一番響くんですよね」と話していたのも印象に残る。

「これだけのチームが、浦和レッズの関係者、選手、現場スタッフ、応援してくださるファン・サポーターの方々が本当にひとつになったときは、とんでもない力が発揮されるんじゃないか」

 引退発表の記者会見で、阿部はこんなことを話した。折に触れて少しずつ言葉は違いながらも、同じようなニュアンスのことを話してきただけに、本気で浦和レッズというクラブ、あるいは地域全体を含めてのポテンシャルを信じているというのが伝わってきた。

「本当に幸せなサッカー人生でした」と話した選手としての時間は間もなく終わる。そして今後は、指導者の道を歩むと本人は話している。ジェフユナイテッド千葉や日本代表でのイビチャ・オシム監督、浦和でのミハイロ・ペトロヴィッチ監督が目標にするべき存在とも話しつつ「どんなに頑張ってもオシム監督やミシャ監督のようにはなれません」なんて言い方もしていた。ただ、選手時代とは違う新たなチャレンジになるだろうけれども、きっと彼の周りには全力で力を貸してくれる人が集まるだろう。

 浦和は今季、リーグ戦の終了後に天皇杯でタイトル獲得の可能性を残す。「選手として残り1ヵ月あるので、その中でもやれることはしっかりやっていきたいと思っていますし、レッズが好きなので良くしていきたい」と話す阿部と、最高の思い出を作るチャンスはまだ残っている。

取材・文●轡田哲朗(フリーライター)

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