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信じられなかった“撤廃報道”。村井チェアマンが改めて強調する「ホームタウン制度の重要性」

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年11月29日

地域に閉じこもることが密着ではない

地域密着の成功例のひとつが川崎フロンターレだろう。クラブはファン・サポーターと理想的な関係を築いている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 コロナ禍の現在はできませんが、スタジアムで町の名前を叫び続ける行為は貴重な体験になります。人には故郷を大切に思う心が存在するはずです。帰れる場所があるという幸せは何物にも代え難いものですよね。

 自分を育んでくれた存在(例えば親や故郷)にはいずれ恩返しをしたいというのが自然な心だと思います。やはりベストなのは、地元のクラブで地元出身の選手が育つことです。ですから、Jリーグはホームグロウン制度を導入しています。地域密着にこだわっているからこその制度とも言えるでしょう。

 ただ、勘違いしてもらいたくないのは、地域に閉じこもることが密着ではないということです。東京のターミナル都市で物産展が展開されているように、アピールの仕方はいくらでもあります。Jリーグも地方クラブの新宿や渋谷でのPR活動を数年前から認めていますし、それはごく自然な流れだと考えています。こうした現状と時代の変化を含め、クラブのマーケティング活動についてルールの一部を見直すというのが我々の動きであって、断じて撤廃などではありません。もっとも、こうした動きも議論を重ねていて、今に始まったわけではありません。

 Jリーグには現在、いずれ東京に全クラブが使えるようなナショナルスタジアムを作りたいとの構想さえあるぐらいです。ホームタウン外の活動でおらが町のクラブをどう知ってもらって、興味を持ってもらうか、そうしたアクションがひいては地域への貢献になると考えれば、ナショナルスタジアムの意義も見えてくるはずです。
 

 Jリーグの全57クラブに求められているのは、それぞれのカラー。クラブフィロソフィーを言語化する作業を推進しています。社長や監督が変われど、サッカーのスタイルは不変。そのような理想を体現してほしいと願っています。

 単純に競い合うというよりも、57通りのサッカーでスポーツ文化を豊かにしてほしいです。57通りの戦い方や人材育成の体現こそが、ホームタウン制度の醍醐味だと考えています。例えば雪国の秋田は、寒い冬に耐えつつ、ここぞという夏に大曲の花火や竿燈まつりを開催します。これをサッカーに落とし込めば、しっかり守りながらもチャンスの時は徹底的に攻め込む、となるでしょうか。いずれにしても、おらが町のサッカーを貫くなら負けても拍手が起きるような文化を築き上げたいと、Jリーグはそう思っています。

 スポーツ不毛の地と言われた川崎では、フロンターレが徹底的に地域に入り込んでひとつの成功例を作っています。18年前、中村憲剛さんが等々力でデビューした試合の観客数は3000人くらいでしたが、今ではチケット入手困難な状況になっていますよね。人口減少傾向にある日本で、川崎は150万人くらいまで人口が増え続けています。その意味で、フロンターレが果たした役割は大きいと考えています。

 サッカーはとにかくミスが多い競技です。プロが試合をしても0‐0で終わるケースが珍しくありません。どれだけ挫折するか、それがサッカーの定義と捉えていいのかもしれません。ただ、その挫折を味わえるからこそ、困難を乗り越える力も育めます。ですので、選手たちにはホームタウンを愛するファン・サポーターに“生き様”も示してもらいたいです。現役時代の中村憲剛さんが大きな怪我から復帰して活躍したように、選手の頑張りがそのクラブの地域に与える力は特別なものだと信じています。

<プロフィール>
村井 満(むらい・みつる)/1959年8月2日生まれ、埼玉県出身。浦和高在学中はGKとして冬の選手権予選にも出場した。早稲田大卒業後、リクルートに入社。そこで執行役員を務めるなどして、14年1月31日、大東和美氏のあとを受けて第5代Jリーグチェアマンに就任し、現在に至る。

取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

※本稿は、サッカーダイジェスト12月9日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を加筆・修正したもの。

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