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信じられなかった“撤廃報道”。村井チェアマンが改めて強調する「ホームタウン制度の重要性」

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年11月29日

骨格の部分は一切いじっていない

「2021Jリーグシャレン!アウォーズ」受賞セレモニーの様子。Jリーグは各クラブに社会活動も求めている。写真:ガイナーレ鳥取

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 「ホームタウン制度撤廃」の一部メディアの報道に対して、迅速に自身の署名で「撤廃・変更の事実は一切ない」と公式サイトで否定した村井チェアマンは、Jリーグの基本理念である「地域密着」をそもそもどう捉えているのか。独自の見解・認識から浮かび上がってきたのは、このリーグの“存在意義”そのものだった。

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 地域密着の理念は、いわばJリーグの背骨です。「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というキャッチフレーズが付いている「Jリーグ百年構想」に「あなたの町に、緑の芝生におおわれた広場やスポーツ施設を作ること」との一文があるように、「あなたの町」と謳っているところに地域密着へのこだわりが表現されていると思います。

 「あなたの町に」と宣言している以上、47都道府県にクラブチームを作ることをコミットしないといけないですし、Jリーグの具体的な世界観をそこからどんどんブレイクダウン(詳細化)させる必要もあります。

 そのこだわりはJリーグ規約にも反映されています。例えば入会基準の項目には、ホームタウンを定めること、ホームタウン内にスタジアムを所有すること、そのスタジアムで年間80パーセント以上のホームゲームを開催することなどの記載があります。またJリーグ規約の第24条では「Jクラブはホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブ作り(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない」ことまで求められています。これは単なる掛け声ではなく、厳格なルールであることを強調しておきます。

 厳格と言えば、入会審査もそうです。同24条には「自治体および都道府県サッカー協会から全面的な支援が得られること」とありますから、ホームタウンの市長、場合によっては知事に「本当にクラブを支えますか」と面会の場で意思確認したうえで、「全面的に支援します」という誓約書までいただいています。

 Jリーグのホームタウンについてこれほど細かく規約を定めているにもかかわらず、「ホームタウン制度撤廃か」との報道がなぜ出たか。不思議でなりません。改めて主張したいのは、この骨格の部分は一切いじっていないということです。
 

 Jリーグがここまで発展できたのは、例えば「鹿島アントラーズ」が一貫して「鹿島アントラーズ」だったからです。仮に最初のクラブ呼称が「住友金属フットボールクラブ」だったらどうなっていたでしょうか。住友金属はその後、新日鉄と合併して新日鐵住金になり、19年には日本製鉄に商号変更しています。今、アントラーズの筆頭株主はメルカリなので、もしかすると、「メルカリ・アントラーズ」になっていたかもしれません。地域名称をチーム名に取り込んでいたからこそ今日までクラブのブランドが変色しなかったわけで、地域名称の部分が企業名だったらファン・サポーターは根付かなかった可能性があります。

 私はチェアマンになる前、3年ほど香港に在住していました。そこでは企業が変わるたびに、サッカークラブの名称、ホームタウンなども変更されました。当時の記憶を辿れば、リーグ戦の観客数が1000人にもいかないような試合が普通にありました。これはコーポレートカラーによってチームカラーが変わってしまうことが多少なりとも影響している結果だと感じました。翻って、Jリーグは創設のタイミングからホームタウンについての規約をしっかりと定め、一貫して地域との関係性を築けました。それはこれからも変わることはありません。

 Jリーグが法人設立された当初はバブル経済崩壊前で、企業の力がとても強い時代でした。そんな企業の支えなく、Jリーグが発展するのは無理だろうと考えられていましたが、それでも「地域に根ざす」というスタンスを崩さなかった川淵三郎さん(当時のチェアマン)の慧眼には恐れ入ります。30年先を見据えた決断で、結果的にそれは正解でした。

 もっとも、ドイツには「50+1ルール」という決まりがあって、投資企業がクラブのオーナーシップを独占できないようになっています。そういうモデルがヨーロッパにある中で、川淵さんたちはJリーグを世界と遜色のないリーグにしようと高い志を持っていました。世界のリーグ事情やクラブ経営をスタディしていたからこその決断でもあり、地域密着が決して突飛なアイデアではなかったわけです。今日までクラブの価値が変わらない状況を保った意味で、地域密着は極めて重要な要素になるのです。

 だからこそ、撤廃報道を耳にした時は正直、憤りを感じました。すぐさまJリーグの公式サイトを通して「そうした事実はない」と表明したくらいですから。その報道に対するファン・サポーターの反応からも、いかに地域密着が大事な思想かが改めて分かりました。
 
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