「やられそうでやられない」空気を作り出す
<守備を固める>
その言葉は、サッカーにおいて危うさを含んでいる。守りの度合いを強めるものだとしても、陣形を硬直させる可能性がある。一つは、気持ちまで守りに入ってしまうこと。もう一つは、守ることに汲々としてしまい、ひどくストレスを感じてしまうことだ。
守りに縛られると、動きが小さくなって、判断が遅れる。
その点で、昨シーズンのラ・リーガ王者であるアトレティコ・マドリーを率いるディエゴ・シメオネは、“防衛”における至高の指揮官の一人だろう。まず、選手を弱気にさせない。士気を高め、強気に守れる。相手を引き込んで、仕留めるような迫力を伝えられる。それによって、守っていても敗色が出ない。むしろ、相手に絶望を与えられるのだ。
そしてシメオネは、守ることに必要な“撓み”を与えられる。それは攻められた時に、竹がしなるように折れそうで折れない範囲とも言えるか。常にポジション的優位を保つことで、相手に100%でプレーさせない。心理戦においても、相手を焦らせ、苛立たせる。
「やられそうでやられない」
その空気を作り出せるのだ。
【動画】アトレティコのカウンターが炸裂!古巣バルサから決めたスアレスのリベンジ弾
その言葉は、サッカーにおいて危うさを含んでいる。守りの度合いを強めるものだとしても、陣形を硬直させる可能性がある。一つは、気持ちまで守りに入ってしまうこと。もう一つは、守ることに汲々としてしまい、ひどくストレスを感じてしまうことだ。
守りに縛られると、動きが小さくなって、判断が遅れる。
その点で、昨シーズンのラ・リーガ王者であるアトレティコ・マドリーを率いるディエゴ・シメオネは、“防衛”における至高の指揮官の一人だろう。まず、選手を弱気にさせない。士気を高め、強気に守れる。相手を引き込んで、仕留めるような迫力を伝えられる。それによって、守っていても敗色が出ない。むしろ、相手に絶望を与えられるのだ。
そしてシメオネは、守ることに必要な“撓み”を与えられる。それは攻められた時に、竹がしなるように折れそうで折れない範囲とも言えるか。常にポジション的優位を保つことで、相手に100%でプレーさせない。心理戦においても、相手を焦らせ、苛立たせる。
「やられそうでやられない」
その空気を作り出せるのだ。
【動画】アトレティコのカウンターが炸裂!古巣バルサから決めたスアレスのリベンジ弾
戦術的に、その図式を導き出せる理由としては、守るだけでなく、常に相手をノックアウトさせる気配を漂わせるからだろう。一発があることを見せ、攻める気勢を削ぐ。
シメオネは、常に“遊撃兵”のような選手を仕込んでいる。
スペイン代表のマルコス・ジョレンテはその最たる例だろう。恵まれた体躯で優れた運動能力を持ち、ウィングバック、攻撃的MF、ボランチ、トップ、シャドーとあらゆるポジションをこなせる。爆発的なスプリント能力と、それを繰り返せる持久力。体力的、精神的に丈夫で、局面の敵を凌駕できる。チーム組織から逸脱し、疾走して相手を襲い、守備陣を混乱に追い込める選手だ。
シメオネは、守りながらも攻める装置を準備している。これはイタリアの伝統的な戦いにも通じるところだろう。それが撓みを生むのだ。
Jリーグでは、マッシモ・フィッカデンティ、ミゲル・アンヘル・ロティーナという監督が、守備戦術のスペシャリストと言えるだろう。常に相手に自由にさせない。持ち場を重視し、ポジション的優位を取る。一方で、セットプレーやカウンターなどで飛び道具を配置している。
90分間、守備を固めて勝機を得られることなど、トッププロの試合ではほとんどない。自陣ゴール前まで押し寄せられた場合、偶発的なピンチも生まれる。それは守りから出られない場合、確率が高くなっていくもので、もはや敗北までの秒読みだ。
守備を固めることは、攻撃の可能性を残すことにある。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
【動画】鮮やかなボレーでようやく決めた!グリエーズマンのアトレティコ復帰初ゴール!
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シメオネは、常に“遊撃兵”のような選手を仕込んでいる。
スペイン代表のマルコス・ジョレンテはその最たる例だろう。恵まれた体躯で優れた運動能力を持ち、ウィングバック、攻撃的MF、ボランチ、トップ、シャドーとあらゆるポジションをこなせる。爆発的なスプリント能力と、それを繰り返せる持久力。体力的、精神的に丈夫で、局面の敵を凌駕できる。チーム組織から逸脱し、疾走して相手を襲い、守備陣を混乱に追い込める選手だ。
シメオネは、守りながらも攻める装置を準備している。これはイタリアの伝統的な戦いにも通じるところだろう。それが撓みを生むのだ。
Jリーグでは、マッシモ・フィッカデンティ、ミゲル・アンヘル・ロティーナという監督が、守備戦術のスペシャリストと言えるだろう。常に相手に自由にさせない。持ち場を重視し、ポジション的優位を取る。一方で、セットプレーやカウンターなどで飛び道具を配置している。
90分間、守備を固めて勝機を得られることなど、トッププロの試合ではほとんどない。自陣ゴール前まで押し寄せられた場合、偶発的なピンチも生まれる。それは守りから出られない場合、確率が高くなっていくもので、もはや敗北までの秒読みだ。
守備を固めることは、攻撃の可能性を残すことにある。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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