[J１第30節]川崎２-１湘南／９月26日／等々力

　リーグ戦では約４か月ぶりのホームゲームとなった30節の湘南戦、川崎は苦しみながら逆転勝利を収めた。

　４日前の鹿島戦から先発を７人入れ替え、従来の４-３-３ではなく、４-４-２でスタートした川崎は15分に失点するなど、前半は厳しい時間を過ごした。それでもハーフタイムで３選手を交代し、４-３-３にシステムを戻した後半は反撃を開始し、66分には旗手怜央のゴールで同点に追いつく。そして後半アディショナルタイムには、アウェーの鹿島戦に続く２試合連続でのドラマが待っていた。

　90＋４分、右サイドから家長昭博が左足でクロスを上げると、中央で待っていたのはFW知念慶。先発し、守備にも走ったストライカーは、70分辺りから足を攣り始めていたというが、ゴールへの強い意欲は欠けることはなかった。マークを外し、精一杯、身体を伸ばしてクロスに合わせると、強烈なヘッドをネットに叩き込んだのだ。

　待望の瞬間、喜びとともに痛みが身体を走る。力を出し尽くし、足を攣って立てなくなった知念の姿には万雷の拍手が送られた。サポーターの記憶に深く刻まれる、感動的なシーンが訪れたと言えるだろう。

　試合後には、ピッチ脇で鬼木達監督が笑顔で知念を迎える。微笑みながらいくつか言葉をかわしたふたりは、どんな会話をしていたのか。試合翌日に鬼木監督に聞いてみた。

「そんなにはなかったですが、『よくやった』という、そこのところは途中から足を攣っていたのも分かっていたので。そういう意味で言うと、ああいうタフなゲームで、走れるのも彼の特長ですし、ねぎらいというか。

　ここ最近の彼の頑張りがあって、結果が出る、出ないは正直、しょうがないと思うんです。ただ買っているのは姿勢ですよね。やっぱりゴールに向かっていこう、点を取ってやろうというところは、FWに一番必要な部分。知念や（小林）悠ら、そういう選手は、そこがすごく見えます。

　悠はいつも見えますし、そういう姿を見ているからこそ、知念もそうやってやるんでしょうし、そういう意味ではFWのうちの選手たちは、高い意識を持ってやってくれていて嬉しいです。そういう形でねぎらったというか、『よくやった』という話をしました」

　一方の知念は試合後に「信頼されているというか、鬼さん（鬼木監督）は僕にずっと期待してくれています。期待が信頼に変わるように、もっとこのプレーを継続していきたいです」と喜びを語っていた。

　指揮官の期待に応えたストライカーが、チームに貴重な勝利をもたらす。等々力での歓喜の逆転劇は、韓国でのACL後、“バブル生活”が続き、心身ともに厳しいコンディションを強いられているチームに新たな活力をもたらすはずだ。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）

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