コパ・アメリカ2015が６月11日（日本時間６月12日）、チリで開幕した。
 
　現地で取材するスポーツライターの熊崎敬氏が、南米の熱き戦いをレポートします。
 
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【コパ・アメリカ2015】
グループA
△メキシコ ０-０ △ボリビア
 
　ボリビアを率いるソリア監督は開幕前、選手たちに力強く訴えた。
「ボリビアのフットボールを見せよう。みんなが思っているよりも、我々はいいプレーができるということを示そうじゃないか」
 
　みんながボリビアをどう考えているか、それは参加国のひとつに過ぎないということだ。グループステージ３試合を終えたら、ひっそりと帰途に就く――。
 
　1997年、ボリビアは3700メートルという高地の力を借りて、地元開催のコパ・アメリカで準優勝する。だが地元開催を終えると魔法が解けたかのように、また元の弱いチームに戻ってしまった。
　その後の５大会は７分け８敗の未勝利。1999年には、トルシエが率いた問題だらけの日本代表にも引き分けている。
 
　だが、ボリビアはソリア監督が語ったように、「みんなが思っているよりも、いいプレーができる」ということを示してみせた。格上のメキシコにスコアレスドロー。押し込まれた終盤を除けば、70分間はほぼ互角に近い戦いを見せた。
 
　高さがあり、胸板も分厚いボリビアの選手たちは、激しい当たりとタックルで、メキシコの俊敏な動きと技巧を封じ込めた。前半は彼らの時間帯だったといっていい。
 
　激しさだけではない。彼らはしっかりとゲームを組み立てていた。
　GKキニョーネスはキックを大きく開いたCBにつないでいたが、途中からメキシコにプレッシャーをかけられても、つなぐことをやめようとしなかった。
 
　ボランチのチュマセロ、ベハラノも、メキシコの鋭い寄せにまったく動じず、素早い身のこなしで縦にさばき続ける。このあたりの意地の張り合いは、実に見応えがあった。そして恵まれた肉体を誇る前線の３人も確実にボールを収め、メキシコを悩ませた。
 
　伏兵の思わぬ健闘に観客席の大多数を埋めたメキシコ人たちはいら立ちを募らせ、中立のチリ人たちから「ボリビアやるよね」という声が上がり始める。
 
　前半は互角以上、後半も互角に近い戦いを見せたボリビアだったが、最後の20分はメキシコの猛攻にさらされた。満を持して投入した10番エスコバルが期待外れで、反対にメキシコが投入したアキーノに再三サイドを突破される。ペナルティエリアが蹂躙され、失点やむなしという場面が立て続けに訪れた。
 
　だがボリビアは、ソリア監督の巧みなシステムチェンジも功を奏し、ゴールを死守した。４分のロスタイムを凌ぎ切り、終了の笛が吹かれると、スタジアムはメキシコ人たちの溜息と非難の口笛に包まれた。一方で、数少ないボリビア人たちが歓声を上げる。
 
　大会連続未勝利は17試合に延びたが、ボリビアはグループリーグ通過に希望をつなぐ勝点１を手にした。このタフなチームなら、ベスト８進出を果たしても決して不思議ではない。
 
取材・文：熊崎敬