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五輪サッカーの醍醐味は、若き「才能」が火花を散らすことの儚さ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:国際大会

小宮良之

2021年08月04日

北京五輪の日本代表は3連敗を喫したが…

五輪の準決勝でマッチアップするペドリと堂安。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 東京五輪、男子サッカーは育成年代の頂点として、若手選手たちが覇を競う大会だ。

 世界最高を決めるワールドカップと区別化するという観点で、1992年のバルセロナ五輪から23歳以下の大会になった(1996年のアトランタ五輪から3人のオーバーエイジ制度が導入)。今回で8度目、これまでと違うのは大会が1年延期になったことで、24歳以下の大会ということだ。

 華やかな舞台ではあるが、あくまで育成年代。ここで活躍した選手も、キャリアが保証されるわけではない。プレーヤーとして成長過程にあるだけに、波がある。

 これを機に飛躍していく選手はいるが、その輝きが最高だったという選手もいる。たまたまサイクルが合って活躍する、という場合も十分にある。プロとして実績が乏しいだけに再現性は低く、そこで悩んでしまうと、キャリアの失速につながる。

「才能」

 そう呼ばれるものは、それだけ脆いものだろう。

 年齢が下がれば下がるほど、その傾向は強くなる。U―21、U―20と育成年代での「才能」はもっと危ういもので、U―17、U―16となると、もはや単なる一瞬の閃光を放つだけの場合もあるし、まだ花を咲かせていないだけという選手も多くいる。そこで「才能」を見極めるのは難しい。

 成長過程での「人間」としての資質、あるいは鍛錬が、「才能」に大きく関与するからだ。

 それはパーソナリティ、メンタルという曖昧な言葉で説明されることもあるが、より簡潔に生きる姿勢と言ってもいい。人、モノに対する向き合い方で、人柄とも訳せる。「その競技が好き」という気持ちの強さも、その要素の一つだろう。
 
 その「人間」がない選手は、育成年代でほとんど淘汰される。競技に人生を捧げられるか、それがすべてだろう。トッププロとして残る選手は人間性が条件だ。

 例えば北京五輪の日本代表は、大会で3連敗を喫した。しかし本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司、内田篤人などは反骨をむき出しに、逆境を糧に飛躍していった。やがて、彼らが一時代の日本サッカーを支えた。

「人間」としての資質と鍛錬で、「才能」を豊かに刺激したのだ。

 東京五輪は24歳以下の大会になっただけに、もしかすると過去の大会よりもドロップアウトするケースは少ないかもしれない。1年の違いだが、すでに所属クラブで大半が場数を踏んでいる。ただ、まだ「才能」が「人間」の比率を上回っているのは間違いないだろう。彼らのサッカー人生に答えが出るのは、あくまでこれからだ。

ただ、「才能」が火花を散らすことの儚さが、五輪サッカーの醍醐味であるとも言える。オーバーエイジはあるが、この年代ではたった一度しかない舞台。そこでメダルをかけて勝負を挑む――。それは一つの英雄譚だ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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