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「プロ輩出」を最優先する淡路島の新設校から、無名の高校3年生・福井悠人がJ3デビューを果たすまで

カテゴリ:高校・ユース・その他

加部 究

2021年07月23日

小中高校を通して全国大会の経験が一度もなかった選手がJ3の舞台へ

全国では無名の存在だった福井悠人。J3讃岐でJリーグデビューを飾った。写真提供:カマタマーレ讃岐

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 7月10日、理想的な環境を整え「プロフェッショナル・フットボール・アカデミー」と命名された通信制高校の一期生がプロのピッチに立った。18歳の誕生日を2日後に控えた彼には、小中高校を通して全国大会出場の経験が一度もない。つまりJ3が、初めての「全国大会」になった。

 福井悠人は、ラ・リーガでのプレーを夢見て、ネイマールに憧れるサッカー少年だった。小学生時代に一度大阪府トレセンに呼ばれたことはあるが、他に際立った勲章はない。大阪府内では強豪の賢明中学から同高校に進学するが、入学して間もない5月には退学してスペインへ留学した。

「マドリードのクラブチームでプレーし、どこかのタイミングでプロのカンテラ(下部組織)へ移籍しようと思っていました」

 ところが留学して7か月後に、ビザの更新が叶わず帰国を強いられてしまう。高校1年生の年末に相当する時期である。次の選択肢は限られていた。

「当時はかなりショックでした。でも淡路島に出来た新設校に進学した友人がいて、とても良い環境だと聞き面白そうだと感じていました。もともと挑戦することが大切だと思っているタイプなので、帰国は悲しかったけれど一方でワクワクもしていました」

 結局悠人は、2002年日韓ワールドカップでイングランド代表が利用した淡路島の施設を拠点とする通信制の神村学園淡路島学習センターに入学し、やがて新しい受け入れ先となる相生学院にチームメイトとともに全員で転校した。

 上船利徳・総監督が、悠人との初対面を思い起こす。
「ウチに練習に来て、ウォームアップを見ただけで良い選手だとわかりました。技術が高く、ドリブルも上手くて、シュートも両足にパンチ力を持っていた。周りも良く見えていたし状況判断もしっかり出来ていました。でもこのままじゃプロは無理だな、と感じたのも事実です」
 
 当たり前のことだが、長所だけを比べても16歳の悠人を凌駕する選手たちは無数に存在する。ただし上船監督(当時)は、長所を磨く術を直截的に言及したことはなかった。ある時は、タイプが似ていて現在スペインで活躍中の乾貴士に繋ぎ、Zoomを通して体験談を聞かせた。また別の機会には、上船自身が長友佑都と一緒にトレーニングをした時の様子や、大迫勇也の鹿児島城西高校時代の練習ぶりなどを情報として伝えた。自分が押しつけるより、具体的に日本代表で活躍する選手たちの努力を伝える方が、はるかに本人のモチベーションを上げ、今やるべきことを考えるようになると思ったからだ。

 悠人自身が振り返る。
「相生に来て技術、メンタルともに凄く成長出来たと思います。入学した頃は、周りも無名の選手ばかりで特にレベルが高いとも思いませんでした。でもみんな次々に長所が見つかり、意識も変わって上手くなって来ました。ここへ来て、サッカーが上手くなる時間が他の人よりたくさん確保できたと思います」
 
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