「あれ、148ポンドじゃないの?」列車で遭遇したスターリングの意外な素顔【英国人エディターコラム】

カテゴリ:ワールド

スティーブ・マッケンジー

2021年08月04日

ロンドンまでずっと赤ちゃんをあやしていた。

列車でスターリングと遭遇。いい意味でフットボーラーらしくなかったという。 (C)Getty Images

画像を見る

 何年か前、マンチェスター・シティの試合を取材に行ったときに、こんなことがあってね。嬉しい発見というか、ある選手の意外な素顔を見ることができた話だ。

 エティハド・スタジアム(マンチェスター・Cの本拠地)からの帰り道。ロンドン行きの列車が発着するピカデリー駅までは歩いて30分ほどで、いつものようにその日も30分の道のりを歩き、列車に乗り込んだ。ロンドンまでは途中6~7駅に停車しながら2時間ほどの旅だ。

 マンチェスターを出て最初に停まるのがストックポート駅で、そこで乗車してきたのがラヒーム・スターリングだった。パートナーと赤ちゃんを連れていて、ちょうど僕とカメラマンと通路を挟んで隣り合う形で席を取ったんだ。

 スターリングは試合を終えて帰り支度を済ませると、家族をピックアップしてストックポートまで車を飛ばしてきたんだろう。ピカデリーにはまだファンが大勢残っているから、混乱を避けるためにもストックポート駅を使ったことは想像に難くない。スターリングはロンドンの生まれだから帰省の旅だったはずだ。

 しばらくすると係員が車内検札にやってきて、スターリングは精算を始めた。ちなみに、切符を持たなくても乗車できるから車内精算は一般的なんだけど、この時のスターリングと係員のやり取りが、意外だったというか、フットボーラーらしくなくて強く印象に残った。

 合わせて170ポンドと言われたスターリングは一瞬、エッという顔なって、「あれ、148ポンドじゃない?」と聞き返したんだ。もちろん、クレームをつけたわけではなくて、それは純粋に金額の確認だった。「以前に乗車した時には148ポンドだったけど、そうじゃないのかい」と、言外にそう言っていたんだ。
 意外だったのは、スターリングほどの選手が運賃をきちんと覚えていたことだ。大金を稼ぐフットボーラーは庶民感覚など失っていくものだけど、彼はそうではなかった。そしてそれは、思いがけない発見だった。

 運賃が値上がりした旨を説明されたスターリングは、承知してクレジットカードを取り出し支払いを済ませると、さらに人間らしい一面を見せてくれた。ロンドンまでの2時間弱、ずっと赤ちゃんをあやしていたんだ。試合終わりで疲れているだろうに、おもちゃで一緒に遊んで良いパパをするスターリングと、その隣で寝てしまうパートナー。なんとも微笑ましい光景だったよね。

 ジャマイカ移民のスターリングは子供の頃から苦労を強いられてきたはずで、それが人間性に滲み出ているようだ。彼は社会活動にも積極的で、いまや立派なロールモデルだ。ここ最近はマーカス・ラッシュフォードに注目が集まっているけど、社会貢献に優劣なんてないからね。

 そうそう、アーセナルのキーラン・ティアニーもまた、フットボーラーらしくないんだよね。飾らない庶民的な一面を見せて、ちょっとした話題になったのはちょうど1年前だった。スタジアム入りする姿が写真に撮られたんだけど、ティアニーが手に持っていたのは『テスコ』(イギリスでもっともポピュラーなスーパーマーケット)のレジ袋だったんだ。ヴィトンでもグッチでもなく、スーパーのレジ袋だよ。ただ、ここまでくると庶民的というより、さすがにエキセントリックなのかな(笑)。

文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。

※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年7月1日号より加筆・修正
 
【関連記事】
「最高すぎる!」メッシ、ネイマール、ディ・マリアらスター選手の豪華5ショットが大反響!
「スターリングは素晴らしいダイバーだ」デンマーク人記者が痛烈な皮肉「PKだと理解できた人は誰もいない」
「彼は残留を望んでいる」未だ“無所属”のメッシ、チームへの合流は先送りに。バルサ会長の見解は?
C・ロナウドが豪華カーコレクションに追加した“超高額な一台”を初公開!「決断の日だ」と意味深コメントも
「高額なら仕方ない」「貴重なジョーカーを失う」ボローニャOBが冨安売却に見解。ステップアップは実現するのか

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • ワールドサッカーダイジェスト WSD責任編集
    9月10日発売
    欧州サッカークラブ
    選手名鑑の決定版!
    2021-22 EUROPE SOCCER
    TODAY 開幕号
    詳細はこちら

  • 週刊サッカーダイジェスト 10月28日号
    10月14日発売
    2021年 J1&J2
    全42クラブの
    ラストスパート診断
    各番記者が旬な疑問に一発回答
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ワールドサッカーダイジェスト
    10月21日発売
    2021ー2022シーズン版
    ビッグクラブ
    最新戦術ガイド
    海外エキスパートが解析!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVol.33
    7月28日発売
    2年ぶりの本大会開催!
    インターハイ選手名鑑
    出場全52校・1040選手を網羅
    データ満載の決定版
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ