初戦の２回戦から「１－０」というスコアが１つ、２つ、３つと続いていった。優勝候補筆頭の昌平を負かした準決勝で４つ目を数えると、武南を倒した決勝が締めくくりとなり、記録はとうとう５つまで伸びた。正智深谷が全試合で「１-０」の持久戦を制し、インターハイ埼玉県予選で悲願の初優勝を飾った。

　就任23年目の小島時和監督の第一声は「すべて１-０ですからね、疲れました」だった。

　成徳大深谷との初戦は、後半終了間際にMF池上恒大（３年）が得点し、西武文理との３回戦は後半アディショナルタイムにFW小林俊樹（３年）が決勝点を奪った。準々決勝の浦和西戦も後半の終盤にCKから小林が決め、関東大会予選ベスト４の難敵を下した。

　今大会のハイライトのひとつが、昌平と顔を合わせた準決勝だ。昨秋の全国高校選手権埼玉大会でも準決勝で対戦し、１-４の完敗を喫したが、リベンジマッチの今回は、後半10分に挙げたMF渡辺友斗（３年）の得点を守り抜いた。

　２倍近い11本のシュートを打たれたが、完全に守りを崩された場面はほとんどなかった。出足の一歩で先んじ、素早く身体を預けてシュートブロック。しつこいプレスと忠実な守備も相手を苦しめ、現在プリンスリーグ関東で暫定２位の昌平にゴールを割らせなかった。
 

「昌平に勝ったからこそ、武南戦が重要でした。ここで負けたら何にもならなかった」と言うのが、負傷離脱中のMF寺田海成（３年）に代わり、腕にアームバンドを巻くCB森下巧（３年）だ。正智深谷は２年前のインターハイ予選２回戦でも昌平に３-０と完勝しながら、準々決勝であえなく敗退。この苦い思いを忘れていなかった。

　決勝ゴールは前半23分という、チームにとっては初体験の早い時間帯に訪れた。武南の左スローインにボランチ初雁龍（２年）が重圧を掛け、こぼれ球に反応したエースFW山口陽生（３年）が、前に出ていた相手GKの頭上を破る強烈な中距離弾を蹴り込んだのだ。

　初優勝の立役者のひとりは、「パンチ力が自分の持ち味ですが、決勝で生かせてうれしい」と今大会初得点を喜び、決めた直後は“一致団結”というチームスローガンを象徴するようにベンチの仲間と抱擁した。

【インターハイ予選埼玉決勝PHOTO】正智深谷１-０武南｜３年FW山口が意表を突くロングシュート！１点を死守した正智深谷が７大会ぶりの本大会出場！