批判の矛先はペレス会長のワンマン体制にも。
試合前からマドリーは追い込まれていた。
土曜日のバレンシア戦に引き分け、リーガ優勝の可能性がほぼ消滅。しかもその試合でカシージャスが大ブーイングを受け、それに対してあからさまに苛立った態度を取ったことで論争が広がっていた。
さらに、ベイルの代理人の余計な一言が混乱に輪をかける。ベイルにパスを出さないと、マドリーの選手たちを批判したのだ。
一連の騒動を受け、『エル・パイス』紙のホセ・サマノ記者は、
「マドリディスタの分裂を阻止できるかどうか、まさしく瀬戸際の一戦」
と銘打ち、ユベントスをホームに迎え撃つこの第2レグの重要性を訴えた。
試合は、23分にC・ロナウドがPKを決めて先制。トータルスコアで追いつき、アウェーゴールの差でリードを奪ったものの、その後はユーベの守備陣を崩しきれないじりじりした展開に。クラブOBで元スペイン代表MFのミチェルは、
「全体的に動きが硬かった。プレッシャーのためだろう」
と振り返っている。
追加点を奪えなかったマドリーは、57分、よりによってカンテラ出身のモラタに同点ゴールを許し、そのまま1-1で試合終了。マドリーはトータルスコア2-3で敗れ去り、連覇を逃した。手塩にかけながら、昨夏、ユーベに放出したモラタに引導を渡される形となった結末はあまりにも皮肉だと、スペイン各メディアは伝えている。
敗因として指摘されているのが、守備的MFの専門職が不在のチーム構成のアンバランスさだ。
怪我のモドリッチが使えなかったため、アンチェロッティ監督は中盤にクロース、イスコ、ハメスを並べたが、いずれも本来はトップ下タイプ。クロースの背後を突かれた57分の失点は、守備的MF不在の弱点がはっきり形に現われたシーンだった。
エル・パイス紙のディエゴ・トーレス記者は、間延びする中盤を大海に喩え、ユーベのビダルのような一線級のセントラルMFを求めたアンチェロッティの要望を突っぱねたフロントの補強策を強く批判した。
交代のカードを1枚しか切らなかったそのアンチェロッティの采配については、ラジオ局『カデナ・コペ』の討論番組などでは、4-3-3に固執した点を含め柔軟性に欠けたとの意見が大勢を占めた。
もっとも、4-3-3は「BBC」(ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドの3トップ)を前提としたシステムであり、それがフロントの意向の反映であることは周知の事実だ。そのうえで、頼みのエースのロナウドが、人気実況アナウンサーのマヌ・カレーニョが指摘したように、「大舞台での勝負弱さ」を露呈しては、敗北も仕方がなかった。
ラジオ局『カデナ・セール』でマドリー戦の実況を担当しているアントニオ・ロメーロ記者は、『AS』紙のコラムで辛辣なペンを走らせている。
「セルヒオ・ラモスが土壇場で同点ゴールを決めた1年前のリスボン(CL決勝)で歯止めがかかった改革の波が、この敗退によって再び吹き荒れることになる。アンチェロッティがその最初の犠牲者となる可能性が高く、クラブから戦犯として名指しを受けた何人かの選手も放逐されることになるはずだ。
フロレンティーノ(ペレス会長)は、またしても強化責任者役を買って出て、新たなコレクションを取り揃え、新監督はそんな会長の意向に沿って、忠実に仕事を進めるはずだ。
現在のマドリーは、周囲をイエスマンで固め、責任意識が極めて希薄な会長が動かすワンマンクラブだ。ファン、あるいはソシオ向けのアンケートの結果次第でクラブの方針はころころ変わる。それでも時々タイトルを獲得できるのは、マドリーがそれだけ偉大なクラブだからだ」
バルサがトリプレーテ(3冠)に向かって突き進むこれからの3週間、その宿敵に寄せられるファンやメディアの関心を逸らそうと、フロレンティーノは話題作りに躍起になるだろう。しかしそれは、醜態を晒すことでしかないとAS紙のアルフレッド・レラーニョ編集長は指摘する。
気まぐれで新しい物好きの会長が君臨し続けるマドリーにとって、たった1年前のデシマ達成(10回目のCL制覇)も遠い過去の記憶でしかないのだ。
構成・文:下村正幸
土曜日のバレンシア戦に引き分け、リーガ優勝の可能性がほぼ消滅。しかもその試合でカシージャスが大ブーイングを受け、それに対してあからさまに苛立った態度を取ったことで論争が広がっていた。
さらに、ベイルの代理人の余計な一言が混乱に輪をかける。ベイルにパスを出さないと、マドリーの選手たちを批判したのだ。
一連の騒動を受け、『エル・パイス』紙のホセ・サマノ記者は、
「マドリディスタの分裂を阻止できるかどうか、まさしく瀬戸際の一戦」
と銘打ち、ユベントスをホームに迎え撃つこの第2レグの重要性を訴えた。
試合は、23分にC・ロナウドがPKを決めて先制。トータルスコアで追いつき、アウェーゴールの差でリードを奪ったものの、その後はユーベの守備陣を崩しきれないじりじりした展開に。クラブOBで元スペイン代表MFのミチェルは、
「全体的に動きが硬かった。プレッシャーのためだろう」
と振り返っている。
追加点を奪えなかったマドリーは、57分、よりによってカンテラ出身のモラタに同点ゴールを許し、そのまま1-1で試合終了。マドリーはトータルスコア2-3で敗れ去り、連覇を逃した。手塩にかけながら、昨夏、ユーベに放出したモラタに引導を渡される形となった結末はあまりにも皮肉だと、スペイン各メディアは伝えている。
敗因として指摘されているのが、守備的MFの専門職が不在のチーム構成のアンバランスさだ。
怪我のモドリッチが使えなかったため、アンチェロッティ監督は中盤にクロース、イスコ、ハメスを並べたが、いずれも本来はトップ下タイプ。クロースの背後を突かれた57分の失点は、守備的MF不在の弱点がはっきり形に現われたシーンだった。
エル・パイス紙のディエゴ・トーレス記者は、間延びする中盤を大海に喩え、ユーベのビダルのような一線級のセントラルMFを求めたアンチェロッティの要望を突っぱねたフロントの補強策を強く批判した。
交代のカードを1枚しか切らなかったそのアンチェロッティの采配については、ラジオ局『カデナ・コペ』の討論番組などでは、4-3-3に固執した点を含め柔軟性に欠けたとの意見が大勢を占めた。
もっとも、4-3-3は「BBC」(ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドの3トップ)を前提としたシステムであり、それがフロントの意向の反映であることは周知の事実だ。そのうえで、頼みのエースのロナウドが、人気実況アナウンサーのマヌ・カレーニョが指摘したように、「大舞台での勝負弱さ」を露呈しては、敗北も仕方がなかった。
ラジオ局『カデナ・セール』でマドリー戦の実況を担当しているアントニオ・ロメーロ記者は、『AS』紙のコラムで辛辣なペンを走らせている。
「セルヒオ・ラモスが土壇場で同点ゴールを決めた1年前のリスボン(CL決勝)で歯止めがかかった改革の波が、この敗退によって再び吹き荒れることになる。アンチェロッティがその最初の犠牲者となる可能性が高く、クラブから戦犯として名指しを受けた何人かの選手も放逐されることになるはずだ。
フロレンティーノ(ペレス会長)は、またしても強化責任者役を買って出て、新たなコレクションを取り揃え、新監督はそんな会長の意向に沿って、忠実に仕事を進めるはずだ。
現在のマドリーは、周囲をイエスマンで固め、責任意識が極めて希薄な会長が動かすワンマンクラブだ。ファン、あるいはソシオ向けのアンケートの結果次第でクラブの方針はころころ変わる。それでも時々タイトルを獲得できるのは、マドリーがそれだけ偉大なクラブだからだ」
バルサがトリプレーテ(3冠)に向かって突き進むこれからの3週間、その宿敵に寄せられるファンやメディアの関心を逸らそうと、フロレンティーノは話題作りに躍起になるだろう。しかしそれは、醜態を晒すことでしかないとAS紙のアルフレッド・レラーニョ編集長は指摘する。
気まぐれで新しい物好きの会長が君臨し続けるマドリーにとって、たった1年前のデシマ達成(10回目のCL制覇)も遠い過去の記憶でしかないのだ。
構成・文:下村正幸