【CLポイント解説】戦術的多様性と明確さこそがユーベ決勝進出の主要因

カテゴリ:ワールド

豊福晋

2015年05月14日

プレーすることで自信を得、古巣を倒したモラタが最高殊勲者。

1)マドリーに訪れなかった“いつか”
 
 現在のルール下では、アウェーでの1-2での敗戦というのは、良くはないが、決して悪くもない。アウェーゴールの意味は大きく、事実、マドリードには楽観的な空気が漂っていた。
 
 サンチャゴ・ベルナベウであれば、チームはポゼッションを保ち、攻め続け、いつかは点(2点以上)も取れるだろう――。
 
 メディアも、サポーターも、そしておそらくレアル・マドリーの選手の心のどこかにも、そんな思いがあったはずだ。しかし、攻守に勝負強さを見せたユベントスを前に、その“いつか”は最後までやってこなかった。
 
 この夜のベルナベウに漂っていたふわりとした空気が、マドリーを2年連続の決勝から遠ざけることになった。
 
 マドリーのアンチェロッティ監督は、ベンゼマにピルロへのパスコースを切り、キエッリーニにボールを集めさせるよう前線のプレスを指示し、この点では一定の成果を収めた。ピルロはリズムが掴めず、普段のように縦へ好パスを配給できた場面が少なかったからだ。
 
 しかし、全体的なインテンシティーの低さは否めなかった。前からの組織的なプレスは機能せず、数人で連動してスペースを狭めていくことができず。結果、ユーベはボヌッチ、ポグバから縦パスが入り、テベスやモラタが受けチャンスを作っていった。
 
 マドリーはポゼッションをキープしていたこともあり、明らかに「いつか点は入るだろう」という空気になっていた。PKでの先制後も、追加点を狙って全体で畳み掛ける勢いは出ず。ゆっくりと獲物を仕留めようという、落ち着きが裏目に出たかたちだ。
 
2)ユーベのロナウド&ベイル対策
 
 ユーベの守備の巧みさは際立っていた。
 
 基本の4-3-1-2は、守備時にはポグバが左サイドに、マルキージオが右サイドに広がり、中央エリアはビダルとテベスが下がって強化。徹底されたこの守備の陣形は、試合中に何度も繰り返された。
 
 最大の脅威であるロナウドに対峙したマルキージオとリヒトシュタイナーは、1対1にならないことを前提にした“謙虚”な守備を実践。ロナウドの前にスペースはなく、勝負する場合もそこは危険地帯ではなかった。反対サイドのベイルに至ってはミスも誘発するなど、局面の勝負でユーベ守備陣は秀逸だった。
 
 これに対してマドリーの攻撃の歯車は噛み合わず、カウンターから数的優位になったチャンスも決めきれないなど、試合が進むに連れ、攻撃面の精度の低さも目立つようになっていく。
 
 モラタのゴールで1-1になってから、ユベントスのアッレグリ監督はどのタイミングでバルザーリを投入して3-5-2に移行するかを考えていたはずだ。早すぎても自陣にへばりつくことになり、逆に遅すぎたら最後の圧力に屈する危険性もあった。
 
 そして、ピルロに替えてバルザーリという最初の交代カードを切ったのは79分のこと。最後の15分間を守備的に乗り切るという指揮官の意図は明確だった。
 
 一方、アンチェロッティ監督は1-1になってからも有効な手が打てず、攻撃はサイドから前線に放り込むワンパターンなかたちが多かった。指揮官の責任だけではないが、この試合では戦術的多様性と明確さを持ったアッレグリのサッカーが勝った格好だ。
 
3)モラタとテベスの貢献ぶり
 
 攻撃面では、モラタの貢献度の高さは計り知れなかった。ヴァランヌと対峙することが多かったが、フィジカルで完勝し、ボールを収めた。キープすることで、後方からの上がりを待つ時間を作り、そこからカウンターのチャンスが数度生まれた。
 
 得点場面での冷静さや自信は、マドリーでベンチを温めていた昨季には見られなかったもの。古巣を離れてプレー機会を得ることで成長し、やがて古巣を叩くことになるとは皮肉な話でもある。第1レグを含め、決勝進出の立役者はモラタだろう。
 
 また、彼のパートナーであるテベスの存在も、攻撃においては欠かせなかった。中盤に下がって数的優位を作り出し、ボールを繋いでいく。クロース、イスコ、ハメスの中央の3人は、前から下がってくるこのテベスを抑えられなかった。
 
 この点では、本来はトップ下である選手を中盤に3枚並べたアンチェロッティの嗜好が裏目に出たと言える。反対にユーベは、中盤のビダル、マルキージオ、ポグバが攻撃のタスクもこなしながら、守備面でもベイル、ロナウド、ハメス、イスコらを抑えるなど、攻守両面で貢献を果たした。
 
 ポゼッションこそマドリーが上回ったが、効率性やツボを抑えた戦いではユーベが一枚上だった。後半には、マルキージオとポグバがゴール前でカシージャスと1対1の状況を迎えるなど、さらに点が入っていてもおかしくはなかったくらいだ。
 
 タレントの数ではマドリーに劣るユーベ。そんな彼らを決勝進出に導いたのは、球際の激しさや、一瞬のチャンスをモノにしようとするイタリアの強みだった。
 
文:豊福晋

古巣相手に成長した姿を披露したモラタ。喜びを露にすることはなかったが、「僕はユベントスの一員」という試合後の言葉には誇りが感じられた。 (C) Getty Images

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統率された守備こそがユーベの強さの源。強引にゴールをこじ開けようとするマドリーに対して、ときにスマートに、ときに身体を張ってこれを封じた。 (C) Getty Images

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