守備力を高めたはずなのに、虚を突かれ易くなる
4-4-2、4-2-3-1、4-3-3、4-2-1-3、3-4-3、3-5-2、5-4-1……。世界中で様々な戦術フォーメーションが生まれ、運用され、すたれ、また生まれる。どれも一長一短。完璧なものなど存在しない。
結局のところ、ピッチに立った選手がそのフォーメーションを運用できるか。戦い方がプレーヤーのキャラクターに合っていなければ、簡単に綻びが出る。相手に先手を奪われることになるのだ。
「フォーメーションなど、電話番号のようなものだ。数字の羅列にすぎず、その人となりなど分からない」
名将セサル・ルイス・メノッティは“戦術オタク”には痛烈な言葉で、サッカーの本質を突いている。ディエゴ・マラドーナの才能を引き出した天才指揮官の一言は重い。数字というシステムに囚われるなど愚の骨頂だ。
しかし、数字でわかる情報もある。採るべき対策も違うだろう。本質は見えなくても、様式は見えるのだ。
例えばサッカーでは攻防において、まず両者ともに防御線を敷く。攻める側はそれを破り、守る側はそれを防ぐ。FW、MF、DF、そしてGKで防御線を張り、出撃する手段を整える。攻守は一体だ。
その点、やはりフォーメーションは戦い方の土台になっている。
結局のところ、ピッチに立った選手がそのフォーメーションを運用できるか。戦い方がプレーヤーのキャラクターに合っていなければ、簡単に綻びが出る。相手に先手を奪われることになるのだ。
「フォーメーションなど、電話番号のようなものだ。数字の羅列にすぎず、その人となりなど分からない」
名将セサル・ルイス・メノッティは“戦術オタク”には痛烈な言葉で、サッカーの本質を突いている。ディエゴ・マラドーナの才能を引き出した天才指揮官の一言は重い。数字というシステムに囚われるなど愚の骨頂だ。
しかし、数字でわかる情報もある。採るべき対策も違うだろう。本質は見えなくても、様式は見えるのだ。
例えばサッカーでは攻防において、まず両者ともに防御線を敷く。攻める側はそれを破り、守る側はそれを防ぐ。FW、MF、DF、そしてGKで防御線を張り、出撃する手段を整える。攻守は一体だ。
その点、やはりフォーメーションは戦い方の土台になっている。
例えば、攻め手として見た場合のMFとDFの間は、陥落したい小さな砦のようなものだろう。そこでボールを受け、プレーの選択肢を持てると、一気に大きな砦を攻め落とせる。このポジションに決定的な仕事ができる選手を擁した場合、戦局を有利に展開できる。
守る側はそこを補強しなければならない。
そこで、4-1-4-1のような布陣は一つの潮流になった。アンカーと言われる選手が、ディフェンスラインの前に立つことで、インサイドへの侵入を許さない。MFの背後をカバーし、防御線をもう一つ多く重ねた格好か。レアル・マドリーのカゼミーロなど、そのアンカーの典型と言えるだろう。
しかしながら、そのシステムも弱点を抱える。アンカーは錨という意味だが、ここに守備を厚くする選手がいることで、どうしても後ろが重たくなる。前への推進力を失い、カウンター一辺倒に。また、構造上、MFとDFの間を一人で守る形になってしまい、その脇が空くケースが生まれてしまう。守備力を高めたはずなのに、虚を突かれ易くなるのだ。
繰り返すが、どのシステムも一長一短がある。結局、数字を知っているだけでは答えは出ない。瞬間的にうまくいったとしても、相手に策を講じられたら、それで終わりだ。
やはり、選手の力を引き出せるような柔軟な采配や個人の判断が不可欠になる。
「フォーメーションなど、電話番号のようなものだ」
名将メノッティの言葉である。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
守る側はそこを補強しなければならない。
そこで、4-1-4-1のような布陣は一つの潮流になった。アンカーと言われる選手が、ディフェンスラインの前に立つことで、インサイドへの侵入を許さない。MFの背後をカバーし、防御線をもう一つ多く重ねた格好か。レアル・マドリーのカゼミーロなど、そのアンカーの典型と言えるだろう。
しかしながら、そのシステムも弱点を抱える。アンカーは錨という意味だが、ここに守備を厚くする選手がいることで、どうしても後ろが重たくなる。前への推進力を失い、カウンター一辺倒に。また、構造上、MFとDFの間を一人で守る形になってしまい、その脇が空くケースが生まれてしまう。守備力を高めたはずなのに、虚を突かれ易くなるのだ。
繰り返すが、どのシステムも一長一短がある。結局、数字を知っているだけでは答えは出ない。瞬間的にうまくいったとしても、相手に策を講じられたら、それで終わりだ。
やはり、選手の力を引き出せるような柔軟な采配や個人の判断が不可欠になる。
「フォーメーションなど、電話番号のようなものだ」
名将メノッティの言葉である。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。