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ヘディングさえもうまくなったメッシの“修練”。元同僚は「意欲が違う」と…【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2021年01月10日

シャビをコピーしたようなプレーを見せるように

CL決勝でも決めるなどメッシのヘッド弾は少なくない。(C) Getty Images

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 人は能力に恵まれることで、どうしても胡坐をかいてしまう側面がある。

 例えば身長の高い選手で、意外にもヘディングがうまくない、という場合が少なくない。その理由は、簡単だろう。ユース年代までは、大した工夫をしなくても単純な身長・体格で勝てる。それによって、技術を高める作業を怠ってしまうのだ。

 ヘディングは、一つの技術である。まずは正しい位置でボールを当て、落下地点を速く見極め、体の当て方を習得し、できるだけ先にジャンプし、最高の到達点で頭に合わせ、適切な方向に飛ばさなければならない。そして、マークを外すような動きも必要になる。単純な高さだけで勝ててしまっていた場合、そうした技術が正しく修練されないのだ。

 大久保嘉人、岡崎慎司、小林悠、奥埜博亮など、日本人でヘディングでの得点が多い選手は、必ずしも背が高くはない。天性の資質もあるだろうが、長い時間をかけ、タイミングを養ってきたのだろう。対人での間合い、強さ、様々な工夫も含めて、だ。

 やはり、サッカーは修練が基本と言える。

 アルゼンチン代表リオネル・メッシが世界最高の選手に君臨することができたのは、サッカーに関わるプレーをすべてうまくなろうとしたからだ。

「ドリブルがうまい選手というのは、そこら中にいる。パサーというのもね。しかし、レオ(メッシ)はあらゆるプレーをうまくなろうとしている。その意欲が違うんだ」

 かつて、バルサでチームメイトだったブラジル代表DFダニエウ・アウベスが語っていたことがあった。

 事実、メッシは年を追うごとに、プレーヤーとして成熟してきた。それほど得意ではなかったFKも、プロデビューしてから練習を積み、いつしか名手になっている。ヘディングも、苦手な選手ではない。言うまでもないが、メッシにロングボールを送ってヘディングで競わせるのは効率的な攻め方ではないが、クロスに対して飛び込むヘディングのタイミングは、実は抜群だ。

 もともとメッシは、右サイドでのプレーを得意としてきたが、どのゾーンでも適切な選択ができる。トップ下、ゼロトップ、そして近年は中盤に下がっても、シャビをコピーしたようなプレーを見せるようになった。ライバルや味方のプレーを模倣し、革新する技術の証左だろう。

【動画】ペレの偉大な記録に並んだメッシのヘッド弾
 
「武器は何か?」

 それはプロ選手に投げかけられる言葉の一つかもしれない。しかし、たった一つだけの武器で、トップクラスの選手になれる世界ではないだろう。実際、メッシの武器をひとつだけ挙げることなど不可能だ。

 戦況に応じ、どんなプレーでもできる選手が、トッププレーヤーと言える。変幻自在、あるいは融通無碍だ。

 その境地に達するのは容易ではないことだが、サッカーを鍛錬してこなかった天才は、トップレベルには存在しない。  

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
 
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