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「東ドイツ最大のスタジアムに8万人が駆けつけ…」敵国のファンも恍惚させたマラドーナの“魔力”を独記者が回顧【現地発】

カテゴリ:ワールド

サッカーダイジェストWeb編集部

2020年12月08日

「これだけ重要な大会でこんな得点を決められるのは、この男だけだろう」

86年のメキシコW杯では決勝で西ドイツを破って戴冠を果たしたアルゼンチン。10番のマラドーナがチームを牽引した。 (C) Getty Images

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 これまで最も偉大なサッカー選手は誰か。ブラジルのエドソン・アランテス・ド・ナシメント、通称ペレか、アルゼンチンのディエゴ・アルマンド・マラドーナか。永遠に続く議論だ。

 私はいつも前者を選んできた。ブラジル代表として3度のワールドカップを制覇(1958、62、70年)したペレは、この10月に80歳の誕生日を祝ったばかりだ。だから余計に、マラドーナが60歳の若さでこの世を去ったのが余計に悲劇的に感じられた。このふたりのアーティストのプレーはいずれも完璧であり、その卓越したテクニックは互いに引けをとらなかった。

 DDR(東ドイツ)時代にスポーツ記者をしていた私が思い出すマラドーナは特に、1986年のメキシコW杯の時の姿で、とても感動したのを覚えている。

 86年6月22日、メキシコシティで行なわれた準々決勝のイングランド戦は、11万4000人が生で、私も含め世界中の人がテレビで観戦していた。マラドーナが、とんでもない独走を始めて、5人のイングランドの選手たちをスキーのスラロームポールみたいに立ちつくさせて、ペーター・シルトンの守るゴールに打ち込んだ時には感激を覚えた。これだけ重要な大会でこんな得点を決められるのは、この男だけだろう。

【動画】世界を熱狂させたマラドーナの“5人抜きゴール”はこちら

 アルゼンチンを2−1の勝利に導くこの得点は、当然のごとく「世紀のW杯ゴール」にも選ばれている。この独走ゴールは、70メートルぐらいはあったし、マラドーナがボールを受けてからフィニッシュに到るまでには11秒しかかかっていない。

 そしてこの5人抜き弾の前に生まれた1点目もマラドーナが決めた。のちに“神の手”として有名になるハンドによるものだったが、大会の何か月か後に本人が「あれは頭と、少し手と、つまりマラドーナ全てだった」とコメントした。

 88年10月26日、当時マラドーナがプレーしていたナポリが、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)で、DDRオーバーリーガの1FCロコモティブ・ライプツィヒと対戦した。第1レグが行なわれた、当時DDRで最大だったセントラル・スタジアムには8万人の観客が押しかけた。ファンが見たかった選手はただ一人、マラドーナだった。ベルリンでテレビ観戦した私ももちろん、マラドーナの一つひとつの動き、パス、シュートに釘付けになった。
 
 マラドーナが亡くなった後、私は当時のDDR代表選手でロコモティブ・ライプツィヒのDFだったハイコ・ショルツに電話をした。「マラドーナを止めること、抑えることはできなかった。ものすごい速さでよく動いたからね。彼のプレーは異次元だったよ」と語っていた。ちなみにこの試合は1−1のドローで終わっている。

 90年のイタリア大会W杯でのマラドーナは、もうピークを超えてしまっていた。そしてアルゼンチンは、決勝で西ドイツに0−1で負けた。

 マラドーナのピッチ外の人生は、サッカーのようにはうまく行かなかった。ピッチの上でのプレーでは、私を含め、あれほど多くの人たちを感動させ、恍惚の境地に至らせたのに。

 あのイングランド戦での独走が頭に浮かぶ。もう一度「YouTube」で見てみたが、やはり見事だし、永遠に忘れがたいシーンだ。マラドーナの死後にペレが言ったことも気が利いている。

「天国でまた一緒にサッカーできることを願う」

 それはどれだけ楽しいことだろう。

文●ミヒャエル・ヤーン
翻訳●円賀貴子

【著者プロフィール】
ミヒャエル・ヤーン(Michael JAHN)/DDR(東ドイツ)時代を含む30年間『Berliner Zeitung』で記者を務め、現在はフリーのコラムニスト。ベルリンの壁崩壊により一夜にしてヘルタ・ベルリン番となり、数々の”ヘルタ本”を出版するという稀有な記者人生を歩む。
 
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