「利き足を判断すること自体が無意味」両足を完璧に使いこなす驚きのタレント【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2020年11月27日

左利きかと思っていたドイツの名左SBが…

両端の自在に操るデンベレは稀有なタレントだ。(C)Getty Images

画像を見る

 左右両足を完璧に使いこなす選手がいる。まるで遜色なしに、である。

 ポルト時代にバイエルン・ミュンヘンとの対戦となった1987-88シーズンのチャンピオンズ・カップ(チャンピオンズ・リーグの前身)決勝で、ヒールキックによる得点を決めたアルジェリア人FWラバー・マジェールはその代表格だろう。

 キックはもちろん、ドリブルも左右両足でボールを巧みに扱いながら行なっていた。左足を使ってほぼ必要最小限のことしかできなかったわたしのような人間からすれば、その天才的な能力は羨望の対象でしかなかった。

 アンドレアス・ブレーメは80~90年代のドイツを代表する名プレーヤーだった。ポジションは左サイドバック。だからわたしはてっきり左利きだと思っていたが、PKはなぜか右足で蹴っていた。

 アルゼンチンとの顔合わせとなった1990年のワールドカップ・イタリア大会決勝でもそうだった。0対0のスコアレスドローで迎えた85分、この極度に緊迫した場面でキッカーを務めたブレーメは禅の精神に相通じる勇敢さをもって右足で蹴り込み、均衡を破った西ドイツ代表は3度目の世界王者に輝いた。彼らは真に称賛に値する選手たちだった。

【動画】両足を巧みに使うデンベレのスーパープレー集
 そんな様々な選手を見てきたわたしが現役選手の中で仰天させられる若者がいる。バルセロナのウスマンヌ・デンベレだ。

 右サイドのタッチライン際を駆け上がってクロスを繰り出すプレーを繰り返し見せた試合の後は、誰もが右利きだと確信するはずだ。しかし、次の試合で中に切れ込んで強烈なシュートを放つシーンを何度も目にした後は、誰もが左利きだと信じて疑わないはずだ。

もはやデンベレの場合は、利き足を判断すること自体が無意味なのかもしれない。彼は起きた時の気分によって、右利き、あるいは左利きと自在に変えることができるに違いない。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。
【関連記事】
「長い間、我慢してきた」グリエーズマンがメッシとの“確執”について沈黙を破る!「レオには苛立ったと言われた…」
「チームプレーを理解することはない」バルサで孤立を深めるデンベレ。クーマンの“忍耐”もそろそろ…【現地発】
「ディエゴが恋しい」モウリーニョが亡きマラドーナとの“逸話”を告白「君こそがナンバーワンだと…」
「オサスナを選んでいれば…」レアル番記者が指摘した久保建英の“誤算”。「マドリーにもビジャレアルを勧めた負い目がある」【現地発】
「ミナミノの時代は来る」リバプール地元紙が“不遇”の南野拓実のスタメン抜擢に期待!「奇妙な序列低下で…」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ