メッシをCFに置くことでは得られない利点を手にしたバルサ。

リバプール時代の絶対的な点取り屋の立場から、3トップの一角となったことで、良さが薄まると懸念されたスアレスだが、周囲の気遣いと指揮官の英断により、本来の凄みをリーガでも披露できるようになった。 (C) Getty Images
昨季、無冠に終わったバルセロナ。これを受けてリオネル・メッシは昨夏、クラブとの契約延長交渉の際に、代理人を通じてひとつの要求を首脳陣に突きつけた。
新シーズンに向けて世界的なFWを補強しなければ、契約延長にサインはしない――。
個人的にメッシが求めていたのは、友人でもあるセルヒオ・アグエロの獲得だ。バルサの強化部もアグエロのことは高く評価していた。しかし、マンチェスター・シティが放出を渋ったため、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は代役として、もうひとりの候補の名を挙げた。
それが、ルイス・スアレスだった。
会合に出席していたメッシの父は、会長の提案に首を縦に振った。それがメッシを満足させるのに十分なものだと、すぐに分かったからだ。
やがてバルサは、リバプールに8100万ユーロを支払ってこのウルグアイ人ストライカーを獲得した。もっとも、スアレスはあの「噛みつき事件」のために10月末まで出場停止処分を受けていたため、シーズン最初の数か月間は練習に明け暮れることを余儀なくされた。
リーガ初登場はサンチャゴ・ベルナベウでのクラシコ。黒星デビューとなったスアレスは、その後も適応するのに苦しんだ。最初の10試合での得点はわずか2。リバプールでゴールを量産してきた彼にしては、あまりに少なすぎる数字だった。
そのため、スアレスは批判を受けることになる。しかしここで彼を救ったのが、スアレス(強力FW)獲得の発案者であるメッシだった。
メッシは、スアレスがプレーしやすいように気を使い続けた。すると、ふたりの連係は向上していく。スアレスは自らシュートができる場面でも、メッシをアシストするようになった。メッシと良好な関係を築くこと――これは現バルサにおける絶対的な掟でもあるのだ。
ルイス・エンリケ監督が、スアレスを当初の右サイドからCFに移したこともプラスに働いた。スアレスは相手CBの背後を狙えるようになり、それがチームの攻撃の幅を広げることにも繋がっていった。
こうして、スアレスは持ち前の得点力を発揮し始めた。マンチェスター・C戦(チャンピオンズ・リーグ)での2得点、クラシコでの決勝点など、今や決定的な試合で決めるのはスアレスだ。
ただ、彼の役割は得点だけではない。CBをひきつけ、ネイマールやメッシのためにスペースを空けることができる。自身が縦へ抜け出して、パスを呼び込むことも可能だ。また、守備時には相手CBとアンカーへ積極的なプレッシングを仕掛ける。
このように、メッシをCFに置くことでは得られなかったプラスを、今シーズンのバルサは手にしたのである。
スアレスの存在は、彼の到来を望んだメッシにも多大な影響を与えた。今シーズンの彼は、チャンスメーカー、アシスト役としての能力をこれまで以上に発揮している。プレーの幅が広がったのである。
メッシが強く要求し、バルサが8100万ユーロを費やした大型補強。これが見事に当たり、スアレスは今、バルサ攻撃陣を牽引する存在になろうとしている。
文:ルイス・フェルナンド・ロホ
翻訳:豊福晋
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはボビー・ロブソン監督の通訳時代から親密な関係を築く。
新シーズンに向けて世界的なFWを補強しなければ、契約延長にサインはしない――。
個人的にメッシが求めていたのは、友人でもあるセルヒオ・アグエロの獲得だ。バルサの強化部もアグエロのことは高く評価していた。しかし、マンチェスター・シティが放出を渋ったため、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は代役として、もうひとりの候補の名を挙げた。
それが、ルイス・スアレスだった。
会合に出席していたメッシの父は、会長の提案に首を縦に振った。それがメッシを満足させるのに十分なものだと、すぐに分かったからだ。
やがてバルサは、リバプールに8100万ユーロを支払ってこのウルグアイ人ストライカーを獲得した。もっとも、スアレスはあの「噛みつき事件」のために10月末まで出場停止処分を受けていたため、シーズン最初の数か月間は練習に明け暮れることを余儀なくされた。
リーガ初登場はサンチャゴ・ベルナベウでのクラシコ。黒星デビューとなったスアレスは、その後も適応するのに苦しんだ。最初の10試合での得点はわずか2。リバプールでゴールを量産してきた彼にしては、あまりに少なすぎる数字だった。
そのため、スアレスは批判を受けることになる。しかしここで彼を救ったのが、スアレス(強力FW)獲得の発案者であるメッシだった。
メッシは、スアレスがプレーしやすいように気を使い続けた。すると、ふたりの連係は向上していく。スアレスは自らシュートができる場面でも、メッシをアシストするようになった。メッシと良好な関係を築くこと――これは現バルサにおける絶対的な掟でもあるのだ。
ルイス・エンリケ監督が、スアレスを当初の右サイドからCFに移したこともプラスに働いた。スアレスは相手CBの背後を狙えるようになり、それがチームの攻撃の幅を広げることにも繋がっていった。
こうして、スアレスは持ち前の得点力を発揮し始めた。マンチェスター・C戦(チャンピオンズ・リーグ)での2得点、クラシコでの決勝点など、今や決定的な試合で決めるのはスアレスだ。
ただ、彼の役割は得点だけではない。CBをひきつけ、ネイマールやメッシのためにスペースを空けることができる。自身が縦へ抜け出して、パスを呼び込むことも可能だ。また、守備時には相手CBとアンカーへ積極的なプレッシングを仕掛ける。
このように、メッシをCFに置くことでは得られなかったプラスを、今シーズンのバルサは手にしたのである。
スアレスの存在は、彼の到来を望んだメッシにも多大な影響を与えた。今シーズンの彼は、チャンスメーカー、アシスト役としての能力をこれまで以上に発揮している。プレーの幅が広がったのである。
メッシが強く要求し、バルサが8100万ユーロを費やした大型補強。これが見事に当たり、スアレスは今、バルサ攻撃陣を牽引する存在になろうとしている。
文:ルイス・フェルナンド・ロホ
翻訳:豊福晋
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはボビー・ロブソン監督の通訳時代から親密な関係を築く。