シャビやイニエスタが連絡役となって両者の意思を伝え合う。
バルサ復調の裏側に、ある興味深い事実が隠されている。
リオネル・メッシとルイス・エンリケ監督は、ほぼ3か月間まともに口をきいていない。これはロッカールーム内のある関係者が証言してくれた事実だ。両者の関係は完全に冷えきっている。
発端はもちろん、あの有名な年始の一件だ。
冬期休暇明けの初戦、チームへの合流が遅れたメッシ(南米選手は特別に数日間多く休暇が許されている)を、L・エンリケはベンチに置いた。メッシは後半からピッチに立ったものの、バルサはこのR・ソシエダ戦に0-1で敗れてしまう。
翌日、メッシは公開練習を欠席した。その理由は、消化器系の問題という曖昧なものだった。
怒ったL・エンリケは練習場でメッシと激しくやり合った。それが外部に漏れ、対立を煽るメディアの報道で不仲説はあっという間に世界を駆け巡ったのである。
エースと監督の衝突は、格好のネタである。この話題が長引くのはどう考えてもまずい。クラブは火消しに走り、メッシもL・エンリケも不仲説を否定した。
この頃のバルサはすべての歯車が狂っていた。アンドニ・スビサレータSDが解任され、その下で働いていた「クラブの象徴」カルレス・プジョールも辞任した。高まるクラブ批判を前に、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、会長選挙の前倒しを発表せざるを得なかった。
不仲説を否定したメッシとL・エンリケだが、和解はあくまで表面的なものだった。年明けから、2人は一切口をきいていない。必要最低限のやり取りは、メディアと観衆の視線が集まる試合での指示くらいのものだ。それもほとんどないが。
しかし衝突以降、メッシは常に先発で出場している。彼らはどうやって意思を確認しているのか。
この特殊な状況を成立させているのは4人の人物だ。
両者の間に入っていわばリエゾンとして機能しているその4人とは、第2監督のファン・カルロス・ウンスエ、シャビ、アンドレス・イニエスタ、そしてセルヒオ・ブスケツ。彼らが双方の意思を伝え合っているのである。
普通に考えれば、こんな関係はチームに害を及ぼすだけだ。ところが奇妙なことに、その不健全な関係性はバルサにポジティブな化学反応を起こしたのである。
対立が表面化して以降、攻撃陣、なかでもメッシは急激に調子を上げた。メッシはスタメンに復帰したエルチェ戦(国王杯5回戦・第1レグ。前述のR・ソシエダ戦の次の試合)から、出場した15試合で18得点とまさしく手が付けられない状態だ。ネイマールやルイス・スアレスへのアシストも含めると、この間のチーム総得点の大半を生み出していることになる。
チームが窮地に陥り、監督と衝突したことで、メッシは新たなモチベーションを得たようだ。みずからへの批判やクリスチアーノ・ロナウドのバロンドール受賞も、彼の闘争心に火をつけたのかもしれない。メッシはいま、ここ数年でもっとも活き活きとしている。
監督とエースが心を通わせていなくても、チームは機能するものだ。バルサの復活と、その裏に隠された真実が、我々にそれを教えてくれる。
【記者】
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはロブソンの通訳時代から親密な関係を築く。
【翻訳】
豊福晋
リオネル・メッシとルイス・エンリケ監督は、ほぼ3か月間まともに口をきいていない。これはロッカールーム内のある関係者が証言してくれた事実だ。両者の関係は完全に冷えきっている。
発端はもちろん、あの有名な年始の一件だ。
冬期休暇明けの初戦、チームへの合流が遅れたメッシ(南米選手は特別に数日間多く休暇が許されている)を、L・エンリケはベンチに置いた。メッシは後半からピッチに立ったものの、バルサはこのR・ソシエダ戦に0-1で敗れてしまう。
翌日、メッシは公開練習を欠席した。その理由は、消化器系の問題という曖昧なものだった。
怒ったL・エンリケは練習場でメッシと激しくやり合った。それが外部に漏れ、対立を煽るメディアの報道で不仲説はあっという間に世界を駆け巡ったのである。
エースと監督の衝突は、格好のネタである。この話題が長引くのはどう考えてもまずい。クラブは火消しに走り、メッシもL・エンリケも不仲説を否定した。
この頃のバルサはすべての歯車が狂っていた。アンドニ・スビサレータSDが解任され、その下で働いていた「クラブの象徴」カルレス・プジョールも辞任した。高まるクラブ批判を前に、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、会長選挙の前倒しを発表せざるを得なかった。
不仲説を否定したメッシとL・エンリケだが、和解はあくまで表面的なものだった。年明けから、2人は一切口をきいていない。必要最低限のやり取りは、メディアと観衆の視線が集まる試合での指示くらいのものだ。それもほとんどないが。
しかし衝突以降、メッシは常に先発で出場している。彼らはどうやって意思を確認しているのか。
この特殊な状況を成立させているのは4人の人物だ。
両者の間に入っていわばリエゾンとして機能しているその4人とは、第2監督のファン・カルロス・ウンスエ、シャビ、アンドレス・イニエスタ、そしてセルヒオ・ブスケツ。彼らが双方の意思を伝え合っているのである。
普通に考えれば、こんな関係はチームに害を及ぼすだけだ。ところが奇妙なことに、その不健全な関係性はバルサにポジティブな化学反応を起こしたのである。
対立が表面化して以降、攻撃陣、なかでもメッシは急激に調子を上げた。メッシはスタメンに復帰したエルチェ戦(国王杯5回戦・第1レグ。前述のR・ソシエダ戦の次の試合)から、出場した15試合で18得点とまさしく手が付けられない状態だ。ネイマールやルイス・スアレスへのアシストも含めると、この間のチーム総得点の大半を生み出していることになる。
チームが窮地に陥り、監督と衝突したことで、メッシは新たなモチベーションを得たようだ。みずからへの批判やクリスチアーノ・ロナウドのバロンドール受賞も、彼の闘争心に火をつけたのかもしれない。メッシはいま、ここ数年でもっとも活き活きとしている。
監督とエースが心を通わせていなくても、チームは機能するものだ。バルサの復活と、その裏に隠された真実が、我々にそれを教えてくれる。
【記者】
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはロブソンの通訳時代から親密な関係を築く。
【翻訳】
豊福晋