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冴えなかったレ・ブルーの「唯一の晴れ間」。偉大なレジェンドを父に持つ息子が、堂々のフランス代表デビュー【現地発】

カテゴリ:ワールド

結城麻里

2020年11月14日

「誰かの息子というのは、代表招集の基準にはならない」

フランス代表デビューを果たした23歳のマルキュス・テュラム。 (C)Getty Images

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 ひと昔前、パリのサンジェルマン・デ・プレにある有名カフェに、父と息子がときどき姿を現した。近くに住んでいたため、従業員や常連は、よく路上でも父子にすれ違った。そのころ息子はまだ10歳余で、恥ずかしがり屋だったという。

 しばらくして息子は、父に見守られながら、フランス東部のソショー育成センターに入所する。次いで息子は、フランス西部のギャンガンでプロになった。父同様に大きな体格だったが、ポジションは正反対。父がディフェンダーだったのに対し、息子はアタッカーになっていた。とはいえ、父のようにフランス代表入りできるかどうかなど、まだまだ不明だった。

 息子の名は一時、ストライカー欠如に悩むオランピック・ド・マルセイユの周辺にも浮上した。だが国境越えを決意し、ドイツのボルシアMGに入団した。そしてメキメキと力を発揮し始めた。父譲りの強い性格も明らかになった。息子は警官に踏みつぶされて窒息死したジョージ・フロイド事件の後、堂々と人種差別糾弾の“片膝セレモニー”をしてみせたのだ。

 そしてこの11月、フランス代表のディディエ・デシャン監督はこう語った。

「“〇〇の息子”というのは、代表招集の基準ではない。マルキュスを呼んだのは、彼がそれに値しているからだ」
 23歳のマルキュス・テュラムはこうして初めて、フランスフットボールの総本山クレールフォンテーヌにある「シャトー」(A代表用の城)に入った。リリアン・テュラムの息子としてではなく、自分の実力で――。

 そのマルキュスが11月11日、いきなり初キャップ・初先発を飾った。スタッド・ド・フランスでおこなわれたフレンドリーマッチのフランス・フィンランド戦(0-2)である。父リリアンが代表デビューを飾ってから26年後、父リリアンが代表を引退してから12年後だった。

 しかも彼は、いきなり父の記録に並びそうになった。左サイドで果敢に動いてチャンスメークしたマルキュスは、15分(ヘッド)と17分(ボレー)にシュートを放ち、もう少しでゴールしそうになったからである。

 そう、ディフェンダーだったリリアン・テュラムは、代表で2ゴールしか決めていないのだ。と言っても永遠の伝説となっている2ゴールである。1998年ワールドカップ準決勝クロアチア戦(2-1)は、テュラムのゴールのおかげで勝利、次いでフランスはブラジルを下して世界王者に輝いたのである。フランス人はテュラムのゴールの瞬間をいまも目に焼きつけている。「自分でも不思議」という表情で“考える仕草”をした父の姿は、消えることなく歴史に刻まれている。
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